【医師監修】葉酸サプリはいつからいつまで?妊活〜授乳期の厚労省推奨量と理由を徹底解説

結論から言うと、葉酸サプリは「妊娠を計画したとき(妊娠1ヶ月前)から、授乳期の終わりまで」飲むことが推奨されています。
初めての妊娠や妊活では、赤ちゃんのために何をするべきか、情報が多すぎて不安になりますよね。特に「葉酸」は重要だと聞くけれど、具体的にいつからいつまで、どのくらい摂ればいいのか、正確な情報を見つけるのは大変です。
この記事でわかること
- 葉酸サプリを飲むべき「正確な期間」とその医学的根拠
- 妊活中〜授乳期まで、ステージ別の「推奨摂取量」
- 後悔しないための「信頼できる葉酸サプリの選び方」
この記事では、厚生労働省の公式な指針や医学的な知見に基づき、あなたの疑問と不安をすべて解消します。
【結論】葉酸サプリは「妊娠1ヶ月前」から「授乳期の終わり」まで
このセクションでは、あなたが最も知りたい「葉酸サプリはいつからいつまで飲むべきか」という疑問に、結論からお答えします。なぜその期間が重要なのか、という理由まで詳しく解説しますので、まずは基本をしっかりと押さえましょう。
開始時期:最低でも「妊娠の1ヶ月前」から
葉酸サプリを飲み始めるべき最も重要なタイミング、それは「妊娠を計画したとき」、具体的には「妊娠する最低でも1ヶ月前」からです。もしかすると、「妊娠がわかってからではダメなの?」と驚かれたかもしれません。しかし、これには非常に大切な医学的根拠があります。
その理由は、赤ちゃんの脳や脊髄(せきずい)といった、中枢神経系の原型となる「神経管(しんけいかん)」が作られる時期に深く関係しています。この神経管は、受精後非常に早い段階、妊娠週数でいうと第6週末までにその大部分が形成されます。これは、生理が遅れて「もしかして妊娠?」と気づくかどうかの、まさにその時期にあたります。
多くの場合、妊娠検査薬で陽性反応が出て、産婦人科で正式に妊娠が確認されるのは、妊娠5週目や6週目以降です。つまり、妊娠に気づいたときには、赤ちゃんの将来の健康にとって極めて重要な神経管の形成が、すでに終わっている可能性があるのです。
この重要なタイミングを逃さないために、多くの専門家は口を揃えて「妊娠前から」の葉酸摂取を強く推奨しています。周産期医療の現場では、予防できるリスクは妊娠前から対策することの重要性が日々痛感されています。お母さん自身がまだ妊娠に気づいていない、本当にごく初期の段階の栄養状態、特に葉酸が、赤ちゃんの体の土台と未来の健康に直結するのです。
将来の赤ちゃんのために、最高のスタートを切ってあげる準備として、妊娠を考え始めたその日から、葉酸サプリの摂取を習慣にすることが理想的と言えるでしょう。
終了時期:「授乳期の終わり」まで
では、葉酸サプリはいつまで飲み続けるべきなのでしょうか。その答えは「授乳期が終わるまで」です。妊娠初期のイメージが強い葉酸ですが、実は妊娠中期から後期、そして出産後の授乳期に至るまで、あなたと赤ちゃんの両方にとって重要な役割を果たし続けます。
その理由は、葉酸が持つ「造血作用(ぞうけつさよう)」と「細胞分裂のサポート」という2つの基本的な働きにあります。まず造血作用についてですが、葉酸はビタミンB12とともに、血液の主成分である赤血球を作り出すために不可欠な栄養素です。
妊娠中は、赤ちゃんに栄養と酸素を届けるために、お母さんの体内の血液量が通常時の1.5倍近くまで増加します。このため、鉄分だけでなく葉酸も不足しがちになり、妊娠性貧血のリスクが高まります。貧血は、めまいや動悸、疲労感の原因となり、快適なマタニティライフの妨げになります。
次に細胞分裂のサポートです。妊娠中期から後期にかけては、赤ちゃんの体が急速に大きくなる時期。日々、ものすごいスピードで細胞分裂を繰り返して成長していきます。この細胞分裂を正常に進めるために、葉酸は設計図(DNA)を正確にコピーするための補給部隊として欠かせない存在です。
そして出産後、授乳期においても葉酸の必要性は続きます。母乳は血液から作られるため、質の良い母乳を安定して作るためにも葉酸は必要不可欠です。
さらに、出産という大仕事を終えた体の回復と、新しい髪が健やかに生え揃うのをサポートする上でも役立ちます。
出産後、赤ちゃんは母乳から成長に必要な栄養の多くを受け取りますが、その母乳の質は、お母さんの栄養状態に大きく左右されます。葉酸は、お母さん自身の産後の回復を助けるだけでなく、母乳を通じて赤ちゃんの健やかな発育にも寄与するのです。また、お母さんの心と体の健康は、赤ちゃんの情緒的な安定にも繋がります。
育児という長い道のりを元気に乗り越えるためにも、授乳期までしっかりと栄養を摂り続けることは、赤ちゃんとご自身の両方にとって非常に大切なのです。
📊 葉酸摂取の推奨期間タイムライン

- 妊活期(妊娠1ヶ月以上前): サプリ摂取開始
- 妊娠初期(〜15週): 最も重要な時期
- 妊娠中期・後期(16週〜): 赤ちゃんの成長とママの貧血予防
- 授乳期: ママの回復と母乳のために
なぜ葉酸は絶対に必要なの?赤ちゃんの先天性リスクを減らす重要な役割

このセクションでは、葉酸がなぜこれほどまでに「絶対必要」と言われるのか、その医学的な理由をさらに深く掘り下げていきます。「いつからいつまで」という期間を理解した上で、「なぜ」という根拠を知ることは、あなたの納得感と摂取を続けるモチベーションにつながります。
最重要の目的は「神経管閉鎖障害」のリスク低減
葉酸摂取の最も重要かつ最大の目的は、先ほども少し触れた「神経管閉鎖障害(しんけいかんへいさしょうがい)」の発症リスクを低減することです。これは、妊娠を考えるすべての女性に知っておいてほしい、非常に大切な情報です。
まず、神経管閉鎖障害とは何かを具体的に説明します。これは、妊娠の本当にごく初期(受胎後28日以内)に、胎児の脳や脊髄の元となる神経管がうまく閉じずに、開いたままになってしまうことで起こる先天性の形態異常の総称です。
この障害には、脳が正常に形成されない無脳症や、脊髄が体外に露出し、下半身の麻痺や排泄機能の障害などを引き起こす二分脊椎(にぶんせきつい)といった、非常に重篤な疾患が含まれます。
なぜ、この話が重要なのか。それは、妊娠可能な年齢の女性が、適切な量の葉酸を摂取することによって、この神経管閉鎖障害の発症リスクを大幅に下げられることが、世界中の多くの研究で証明されているからです。
引用:厚生労働省
日本では、2000年に厚生労働省から「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のために、妊娠の可能性がある女性は、通常の食事からの葉酸摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日400μgの葉酸を摂取するよう」通知が出されました。
*出典: 厚生労働省「[神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について]」(平成12年12月28日)
各国の研究結果を統合した分析では、葉酸のサプリメント摂取により、神経管閉鎖障害のリスクを50~70%程度低減できると報告されています。
ただし、日本では葉酸摂取の推奨後も神経管閉鎖障害の発生率は十分に減少しておらず、妊娠を計画する段階からの摂取がいかに重要か、そしてその知識がまだ十分に浸透していない現状を示しています。だからこそ、この記事を読んでくださっているあなたが正しい知識を持つことが、未来を変える一歩になるのです。
ママと赤ちゃんの健康を支える葉酸の働き
神経管閉鎖障害のリスク低減という極めて重要な役割に加えて、葉酸は妊娠全期間と産後を通じて、ママと赤ちゃんの両方の健康を支える、いわば「縁の下の力持ち」のような働きを数多く持っています。ここでは、その代表的な3つの働きについて、詳しく見ていきましょう。
一つ目は、先ほども触れた「造血作用」です。葉酸は「造血のビタミン」とも呼ばれるほど、血液、特に赤血球を作るプロセスに深く関わっています。赤血球は、体中に酸素を運ぶ大切な役割を担っています。妊娠中は、お腹の赤ちゃんにも酸素を供給する必要があるため、体は普段よりも多くの血液を必要とします。
このとき、赤血球の材料となる鉄分やビタミンB群、そして葉酸が不足すると、酸素を運ぶ能力が低下し、貧血状態に陥りやすくなります。妊娠中の貧血は、母体の息切れや倦怠感だけでなく、早産や低出生体重児のリスクを高める可能性も指摘されており、予防が非常に重要です。
二つ目は、「細胞分裂のサポート」です。日々、ものすごいスピードで細胞分裂を繰り返して成長する赤ちゃんにとって、葉酸は欠かせません。体がどんどん大きくなる中期以降も、その役割は非常に大きいのです。
三つ目は、「DNAの合成」を助ける働きです。葉酸は、細胞の核にあるDNAが正確に複製される過程で不可欠な役割を果たします。これにより、正常な細胞分裂が促され、赤ちゃんの健全な発育を根底から支えていると言えます。
【時期別】厚生労働省が示す葉酸の推奨摂取量と上限量

葉酸の重要性をご理解いただいたところで、次に皆さんが知りたいのは「では、具体的に一日どれくらいの量を摂ればいいの?」ということでしょう。
このセクションでは、国の指針である厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に基づき、妊活中から授乳期まで、あなたのライフステージに合わせた推奨摂取量と、超えるべきではない耐容上限量を詳しく解説します。
【重要】厚生労働省の指針に基づく正確な摂取目標
葉酸の摂取量を考える上で最も大切なのは、「サプリメントからの摂取が特に推奨される時期」と「食事からの摂取を増やすべき時期」を明確に区別することです。以下の表は、厚生労働省の指針を正確に反映したものです。
表1: 葉酸の食事摂取基準(日本人の食事摂取基準2020年版準拠)
時期 | 食事から摂るべき葉酸の推奨量(食事性葉酸) | サプリ等で追加すべき葉酸の推奨量(モノグルタミン酸型葉酸) |
---|---|---|
成人女性(通常時) | 240μg/日 | 不要 |
妊活期~妊娠初期 | 240μg/日 | +400μg/日 |
妊娠中期~後期 | 480μg/日(通常量240μg + 付加量240μg) | 国の指針として特段の定めなし |
授乳期 | 340μg/日(通常量240μg + 付加量100μg) | 国の指針として特段の定めなし |
出典: 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より作成
この表からわかる重要なポイントを、ステージごとに詳しく解説します。
- 妊活期〜妊娠初期:サプリメントの活用が強く推奨される時期
この時期は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを低減するため、通常の食事から摂る240μgに加えて、サプリメント等から400μgの葉酸を摂取することが「望ましい」とされています。これは、国の指針が唯一、サプリメント等からの積極的な摂取を推奨している極めて重要な時期です。 - 妊娠中期・後期:食事からの摂取を増やす時期
この時期は、胎児の成長と母体の血液量を支えるため、食事から摂る葉酸の推奨量が合計480μgに増えます。これは通常量に240μg上乗せすることを意味します。この時期について、国はサプリメントからの追加摂取を特に推奨してはいません。葉酸を多く含む食品を意識して食事に取り入れることが基本となります。 - 授乳期:引き続き食事からの摂取が重要な時期
授乳期は、母体の回復と母乳のために、食事から摂る葉酸の推奨量が合計340μgとなります。これも通常量に100μg上乗せする形です。
つまり、サプリメントからの付加が国の指針として明確に推奨されているのは「妊活期〜妊娠初期」であり、それ以降の時期は、まず食事からの摂取量を増やすことが求められている、と理解することが非常に大切です。
なぜサプリからの摂取が推奨されるのか(妊活期〜妊娠初期)
「なぜ、最も大事な時期だけサプリが推奨されるの?」と疑問に思うかもしれません。その理由は、食事に含まれる葉酸と、サプリメントに含まれる葉酸とでは、体内での吸収・利用効率が大きく異なるからです。
食事に含まれる天然の葉酸は、専門用語で「食事性葉酸(ポリグルタミン酸型葉酸)」と呼ばれ、体内で利用できるのは摂取した量の約50%程度です。
一方、サプリメントに含まれる葉酸は「モノグルタミン酸型葉酸」と呼ばれ、利用効率は約85%と非常に高いことがわかっています。
この利用効率の差があるため、厚生労働省は神経管閉鎖障害のリスク低減という重要な目的を確実に達成するために、「食事からの摂取」に加えて、「サプリメント等からの安定した摂取」を推奨しているのです。
食事だけで妊娠初期に必要な葉酸を十分に摂ろうとすると、非常に大変です。葉酸は水溶性で熱に弱いため、調理によって失われやすい性質もあります。
毎日、大量の野菜や果物を調理法まで工夫して食べるのは、特につわりで体調が優れない時期には現実的ではありません。だからこそ、必要な量を確実に、そして手軽に補給できるサプリメントの活用が、医学的にも合理的かつ有効な手段となるのです。
葉酸の過剰摂取リスクについて
サプリメントを利用する上で、過剰摂取のリスクを正しく知っておくことは非常に重要です。前のセクションの表で示した耐容上限量(18-29歳で900μg、30歳以上で1,000μg)は、サプリメントに含まれるモノグルタミン酸型葉酸に対する上限であり、通常の食事から摂る食事性葉酸はこの上限量に含みません。
市販のサプリの多くは1日の摂取目安量が400μg程度なので、用法・用量を守っていれば上限を超える心配はまずありません。
過剰摂取で最もよく知られているリスクは、「ビタミンB12欠乏症の発見が遅れる可能性がある」ことです。葉酸とビタミンB12は協力して働くため、葉酸だけを大量に摂取すると、ビタミンB12の欠乏が見逃されてしまう可能性があります。
これが、上限量が設定されている主な理由です。ビタミンB12の欠乏が長引くと、元に戻らない神経障害を引き起こすことがあるため、注意が必要なのです。
自己判断で量を増やさず、不安な点は専門家に相談しましょう。
推奨量を守ることが大前提ですが、過度に心配する必要はありません。万が一、間違って1日だけ2回分飲んでしまったという程度で、すぐに健康被害が起こるわけではないので、パニックにならないでください。
ただし、それを毎日続けるのは問題です。一番避けたいのは、ご自身で『たくさん飲んだ方が効果があるはず』と判断し、常用量を増やしてしまうことなのです。
【後悔しない】信頼できる葉酸サプリの選び方 6つのポイント

ここまでで、葉酸の重要性や摂取量についてご理解いただけたと思います。次のステップは、「では、具体的にどんなサプリメントを選べばいいの?」という疑問を解消することです。
市場には数多くの葉酸サプリがあり、どれを選べば良いか迷ってしまうのは当然です。このセクションでは、商品を直接的に推奨するのではなく、あなたがご自身で「後悔しない、信頼できる一品」を見つけるための6つの重要なチェックポイントを解説します。
ポイント①:葉酸の含有量が400μgであること
妊活期から妊娠初期には、サプリから1日400μgの葉酸を摂取することが推奨されています。まずはこの含有量を満たす製品を基準に選びましょう。製品によっては500μgなど少し多めに含まれるものもありますが、耐容上限量を考慮すれば400~500μgの範囲が一般的です。
ポイント②:葉酸以外の栄養素もチェックする
葉酸は単独で働くわけではなく、他の栄養素と協力し合うことで、その効果を最大限に発揮します。そのため、葉酸以外のサポート成分がバランス良く配合されているかも、重要な選択基準となります。特に以下の栄養素は、妊娠中・授乳中に不足しがちであり、葉酸とともに摂取することが推奨されています。
- 鉄: 妊娠中は血液量が大幅に増えるため、貧血予防に不可欠です。カルシウムと並び、妊娠中に最も不足しやすいミネラルと言われています。
- カルシウム: 赤ちゃんの骨や歯を形成するのに必要なのはもちろん、お母さん自身の骨の健康を維持するためにも重要です。
- ビタミンD: カルシウムの吸収を助ける働きがあります。近年、多くの日本人で不足していることが指摘されているビタミンです。
- ビタミンB6: 葉酸と同じビタミンB群の仲間で、つわりの症状を軽減する効果があるという研究報告があります。また、タンパク質の代謝を助ける働きもあります。
- ビタミンB12: 葉酸とともに赤血球を作る働きをします。葉酸の過剰摂取によるビタミンB12欠乏症の診断マスクを防ぐ意味でも、一緒に配合されていることが望ましいです。
もちろん、すべての栄養素を完璧に含むサプリを探す必要はありません。基本はバランスの良い食事であり、サプリはあくまで補助です。しかし、ご自身の食生活で不足しがちな栄養素や、特に摂取したい栄養素が、葉酸と一緒に入っている製品を選ぶと、より効率的に健康管理ができるでしょう。
ポイント③:安全性が確認されているか
口に入れるもの、そして何より未来の赤ちゃんに影響を与える可能性があるものだからこそ、安全性への配慮は絶対に妥協できないポイントです。製品が信頼できる品質管理体制のもとで製造されているかを確認することは、消費者の権利であり、義務とも言えます。
安全性を確認する上で、一つの大きな目安となるのが「GMP認定工場」での製造です。GMP(Good Manufacturing Practice)とは、日本語で「適正製造規範」と訳され、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が「安全」に作られ、「一定の品質」が保たれるようにするための製造工程管理基準です。この認定を受けている工場で製造された製品は、品質管理のレベルが高いと判断できます。
さらに、メーカーによっては放射能検査や残留農薬検査、アレルギー物質の検査などを自主的に行い、その結果を公式サイトなどで公開している場合があります。こうした第三者機関による検査結果を公開している企業は、製品の安全性に対する意識が高いと考えられ、より信頼できる選択肢と言えるでしょう。
パッケージの美しさや価格だけでなく、こうした「見えにくい」部分にまで目を配ることが、賢い消費者としての大切な姿勢です。
ポイント④:添加物が少ないこと
サプリメントは、栄養成分を固めて錠剤にしたり、品質を安定させたりするために、どうしても一定の添加物が必要となります。しかし、妊娠中というデリケートな時期に飲むものだからこそ、不要な添加物はできるだけ避けたいと考えるのは自然なことです。
具体的には、香料、着色料、人工甘味料、保存料といった、サプリメントの機能や栄養とは直接関係のない添加物が使われていない製品を選ぶと、より安心感が高まります。
多くのメーカーが「無添加」を謳っていますが、何が「無添加」なのかはメーカーの基準によって異なります。「香料・着色料・保存料 無添加」と具体的に記載されている製品を選ぶなど、その中身をしっかりと確認しましょう。
ただし、「添加物=すべて悪」と過度に恐れる必要もありません。日本で使用が認められている添加物は、国の安全基準をクリアしたものです。ここでは、あくまで「より安心して飲み続けられる製品を選ぶための一つの視点」として、添加物の種類を確認する習慣を持つことをお勧めします。
ポイント⑤:継続しやすい価格と形状であること
最後のポイントですが、これも非常に現実的で重要な視点です。葉酸サプリは、妊活期から授乳期の終わりまで、1年以上にわたって飲み続ける可能性があります。そのため、無理なく続けられることが何よりも大切です。
まずは価格です。高価なサプリメントが高品質とは限りませんし、安価だからといって品質が低いとも一概には言えません。大切なのは、ご自身の経済状況の中で、毎月、負担感なく購入し続けられる価格帯の製品を選ぶことです。1ヶ月あたりのコストを計算し、長期的な視点で判断しましょう。定期購入割引などを利用すると、お得に続けられる場合もあります。
次に形状や飲みやすさです。特につわりの時期は、匂いや味に敏感になり、錠剤を飲み込むこと自体が苦痛になることも少なくありません。サプリメントの粒の大きさや匂いの有無は、継続のしやすさを大きく左右します。口コミサイトやレビューなどを参考に、「小粒で飲みやすい」「匂いが気にならない」といった評価の製品を選ぶのも一つの手です。無料サンプルやお試しセットがある製品なら、実際に試してから本格的に購入を決められるので、さらに安心です。自分にとってストレスの少ない製品を見つけることが、長く付き合っていくための秘訣です。
ポイント⑥:葉酸の種類(合成葉酸・活性型葉酸)を知る
葉酸サプリに使われる葉酸には、主に2つの種類があります。
- 合成葉酸(モノグルタミン酸型葉酸 / Folic Acid): 長年の研究実績があり、厚生労働省が推奨する400μgという数値も、この合成葉酸のエビデンスに基づいています。公衆衛生上の推奨の標準となっている種類です。
- 活性型葉酸(5-MTHFなど): 体内で変換されるプロセスを必要とせず、そのまま利用されやすいという特徴があります。比較的新しいタイプの葉酸であり、今後のさらなる研究が期待されています。
現在の国の推奨は「合成葉酸」の実績に基づいています。それぞれの特徴を理解した上で、どちらのタイプのサプリメントを選ぶか検討するのも一つの方法です。
葉酸サプリに関するよくある質問(FAQ)
ここでは、多くの方が抱きがちな葉酸サプリに関する細かい疑問について、Q&A形式で一つひとつ丁寧にお答えしていきます。あなたの「あと少しだけ知りたい」を解消します。
Q. 妊娠に気づいてから飲み始めても意味はありますか?
A. はい、大いに意味があります。気づいた時点から、すぐに飲み始めてください。
「遅すぎる」ということは決してありません。神経管閉鎖障害のリスク低減に最も重要な期間を過ぎていたとしても、葉酸は胎児の成長と母体の健康のために、妊娠全期間を通じて必要です。
実際に、臨床の現場でも、妊娠がわかってから葉酸サプリを飲み始めるお母さんは非常に多くいらっしゃいます。どうかご自身を責めないでください。
気づいた時が、あなたにとってのベストなタイミングです。これからの長いマタニティライフと、その後の育児期間を見据えて、今からしっかりと栄養を補給していくことが何より大切です。前向きな気持ちで、サプリメントの摂取を続けてください。
Q. いつ飲むのが一番効果的ですか?(朝・昼・夜)
A. 医薬品ではないため、飲む時間に厳密な決まりはありません。大切なのは、毎日忘れずに続けることです。
葉酸サプリは健康食品であり、医薬品のように「食前」「食後」といった厳密な指定はありません。吸収率が時間帯によって大きく変わるという科学的なデータもありません。
そのため、最も重要なのは「飲み忘れを防ぎ、毎日継続すること」です。これを実現するために、ご自身の生活リズムの中にサプリを飲む時間を組み込んでしまうことをお勧めします。
例えば、
- 朝食後に飲むのを習慣にする
- 職場のデスクに置いておき、昼食後に飲む
- 寝る前の歯磨きのタイミングで、就寝前に飲む
など、自分にとって一番続けやすいタイミングを見つけて、それを毎日の「儀式」のようにしてしまうのが効果的です。
多くのサプリメントは、胃への負担を考慮して、胃の中に食べ物が入っている食後の摂取を推奨していることが多いですが、ご自身の体調に合わせて調整してください。もし空腹時に飲んで胃がもたれるような感覚があれば、食後の摂取に切り替えるなど工夫してみましょう。
Q. 飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
A. 気づいた時点で、その日の分(1回分)を飲んでください。ただし、2回分を一度にまとめて飲むのはやめましょう。
毎日飲もうと思っていても、うっかり忘れてしまう日は誰にでもあります。飲み忘れたことに気づいたら、慌てずにその時点で1回分を摂取してください。例えば、朝飲むのを忘れて夜に気づいた場合は、夜に飲んで大丈夫です。
ただし、絶対にやってはいけないのが、前日の飲み忘れ分と今日の分を合わせて、一度に2回分飲むことです。【葉酸の過剰摂取リスクについて】で解説したように、葉酸には「耐容上限量」が設定されています。
通常のサプリであれば1回分で400μg程度ですが、2回分を一度に飲むと800μgとなり、上限である900~1,000μgに近づいてしまいます。一度で健康被害が出る可能性は低いですが、過剰摂取のリスクを避けるため、まとめて飲むのは避けるべきです。
葉酸は水溶性ビタミンなので、体内に長時間蓄積しておくことができません。毎日コンスタントに摂取することが大切ですが、1日忘れたからといって、過度に心配する必要はありません。また次の日から、忘れずに再開することを心がけましょう。
Q. 男性も葉酸を飲んだほうがいいですか?
A. 必須ではありませんが、男性が飲むことにもメリットがあるという研究があり、妊活の一環として夫婦で飲むことも選択肢の一つです。
葉酸は、これまで解説してきたように、主に妊娠中の女性と胎児にとって極めて重要な栄養素です。そのため、男性にとっての「必須」の栄養素というわけではありません。
しかし、近年、男性の妊活においても葉酸が注目されつつあります。葉酸は、DNAの合成や細胞分裂に関わる根源的な栄養素です。精子もまた、活発に作られる細胞の一つであり、その設計図であるDNAの質が重要となります。
いくつかの研究では、葉酸の摂取が精子の質(濃度や運動率)を改善する可能性があることが示唆されています。
まだ研究途上の段階であり、男性の葉酸摂取が不妊治療に必須であると確立されているわけではありません。しかし、葉酸は男性にとっても、健康な赤血球を作ったり、動脈硬化のリスク因子であるホモシステインという物質の血中濃度を正常に保ったりする上で、有益な栄養素です。
結論として、妊活を始めるにあたり、奥様が葉酸サプリを飲むタイミングで、ご主人も一緒に飲んでみる、というのはポジティブな選択肢と言えるでしょう。必須ではありませんが、夫婦で一緒に赤ちゃんのことを考える良いきっかけにもなります。
Q. 複数のサプリを併用しても大丈夫ですか?
A. 併用自体は可能ですが、栄養素の過剰摂取、特に葉酸の上限量を超えないように、細心の注意が必要です。
健康や美容のために、複数のサプリメントを日常的に摂取している方もいらっしゃるでしょう。例えば、葉酸サプリに加えて、マルチビタミンや鉄剤、美容系のサプリなどを飲んでいるケースです。
複数のサプリを併用する場合、最も注意すべきなのは「栄養素の重複による過剰摂取」です。特に、葉酸サプリを飲んでいる上で、一般的な「マルチビタミン」を併用すると、そのマルチビタミンにも葉酸が含まれていることが多く、意図せず葉酸の総摂取量が多くなってしまう可能性があります。
例えば、葉酸サプリで400μg、マルチビタミンで200μgの葉酸を摂っていたとすると、合計で600μgになります。これだけなら上限内ですが、製品の組み合わせによっては上限の900~1,000μgに近づいてしまうことも考えられます。
複数のサプリを飲む際には、必ずそれぞれの製品の成分表示を一つひとつ確認し、ご自身がどの栄養素を合計でどれくらい摂取しているのかを把握する習慣をつけてください。
計算が複雑でわからない場合や、不安な場合は、自己判断で続けるのではなく、必ずかかりつけの医師や薬剤師、あるいは管理栄養士に、現在飲んでいるサプリの一覧を見せて相談しましょう。専門家が、あなたにとって最適な組み合わせをアドバイスしてくれます。
まとめ:安心して元気な赤ちゃんを迎えるために
これまで、葉酸サプリを飲むべき期間から、その理由、適切な摂取量、そして信頼できる製品の選び方まで、詳しく解説してきました。最後に、この記事の最も重要なポイントを振り返り、あなたが今日から安心して具体的な一歩を踏み出すための要点をまとめます。
葉酸サプリ摂取の要点チェックリスト
チェック項目 | ✅ 押さえるべきポイント |
---|---|
いつから飲む? | 妊娠を計画したとき(最低でも妊娠1ヶ月前)から。 |
いつまで飲む? | 授乳期が終わるまで、葉酸が豊富な食事を心がける。サプリの継続も選択肢の一つ。 |
なぜ飲むの? | 赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを大幅に低減するため。 |
どのくらい飲む? | 【妊活~妊娠初期】は食事240μg + サプリ400μgの合計640μgを目指す。 |
注意する点は? | サプリ等からの葉酸の上限量は1日900~1,000μg。用法・用量を守る。 |
どうやって選ぶ? | ①葉酸400μg、②サポート成分、③安全性(GMP認定等)、④添加物、⑤続けやすさ、⑥葉酸の種類を総合的に判断。 |
このチェックリストが、あなたの知識の整理と、日々の実践の助けとなれば幸いです。
最後に伝えたいこと
葉酸サプリについて正しく理解し、きちんと摂取することは、あなたと未来の赤ちゃんを守るための、科学的根拠に基づいた大切な行動です。それは間違いありません。しかし、サプリはあくまで、あなたの健康的な生活を支えるための「お守り」のような存在です。
一番大切なのは、あなたが考えすぎや不安で心をすり減らすことなく、心身ともにリラックスして、健やかに過ごすことです。バランスの取れた食事を楽しみ、適度な運動を心がけ、ゆったりとした気持ちで毎日を送ること。その土台の上に、サプリメントという賢い選択肢を加える。それが、赤ちゃんを迎えるための最も理想的な準備です。
この記事が、あなたの葉酸に関する疑問や不安を少しでも和らげ、自信を持ってマタニティライフの第一歩を踏み出すためのお役に立てたなら幸いです。
まずはかかりつけの産婦人科医に相談しましょう
どんなサプリメントを選ぶべきか、あなたの現在の健康状態や食生活に最適なのは何か、最終的には専門家である医師に相談するのが最も安全で確実です。
妊娠・妊活に関する不安や疑問があれば、一人で抱え込まず、ぜひかかりつけの産婦人科医や、地域の保健師、助産師に相談してみてください。専門家は、あなたの心強い味方です。
参考文献
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
- 厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」(平成12年12月28日)
厚生労働省~健康づくりサポートネット~「葉酸とサプリメント」