【医師監修】葉酸サプリの本当の効果とは?妊活・妊娠中の必要性といつからいつまで飲むべきか徹底解説
葉酸サプリは、未来の赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを大幅に下げるために、特に妊活〜妊娠初期の女性にとって極めて重要です。
インターネットには様々な情報が溢れていますが、本当に信頼できる情報を得たいと願う方も多いでしょう。
この記事では、小児科専門医監修のもと、医学的根拠に基づいた葉酸の正しい知識と摂取方法を、どこよりも分かりやすく解説します。
この記事を読めば、以下の3つの点が明確になります。
- 1.なぜ妊活・妊娠中に葉酸が「必須」と言われるのか、その科学的根拠
- 2.厚生労働省が推奨する葉酸の正しい摂取時期(いつからいつまで)と摂取量
- 3.葉酸サプリに関するよくある疑問と、小児科専門医による的確な回答
なぜ最重要?妊活・妊娠中に葉酸サプリが必要不可欠な理由

このセクションでは、葉酸が妊活・妊娠中の女性にとってなぜ「必要不可欠」とまで言われるのか、その最も重要な理由を深掘りします。
結論から言うと、適切な時期の葉酸摂取が、赤ちゃんの先天性疾患である「神経管閉鎖障害」の発症リスクを著しく低減させることが、数多くの研究で証明されているからです。
監修者のアドバイス
赤ちゃんの「神経管閉鎖障害」のリスクを大幅に低減する
まず、神経管閉鎖障害(しんけいかんへいさしょうがい)という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。
これは、妊娠初期に赤ちゃんの脳や脊髄の基となる「神経管」という部分が正常に形成されないことによって起こる、先天性の障害です。
代表的なものに、脳が正常に形成されない「無脳症」や、背骨の骨がうまくつながらず、脊髄が外に出てしまう「二分脊椎」などがあります。
この神経管が作られるのは、妊娠6週末まで、つまり受胎後およそ28日頃までという、非常に早い時期です。
この時期は、多くの女性がまだ妊娠に気づいていないか、気づいたばかりのタイミングにあたります。
葉酸は、ビタミンB群の一種で、細胞が新しく作られる際に不可欠なDNAの合成を助ける働きがあります。
特に、細胞分裂が活発に行われる胎児期には、葉酸が大量に必要とされます。
神経管が形成されるこの重要な時期に母体の葉酸が不足していると、正常な細胞分裂が妨げられ、神経管閉鎖障害の発症リスクが高まってしまうのです。
実際に、1991年に英国で行われた大規模な研究をはじめ、世界中の多くの研究で「妊娠前から妊娠初期にかけて葉酸サプリメントを摂取することで、神経管閉鎖障害の発症リスクが50〜70%も低減する」ことが明らかになっています。
日本でも、2000年に厚生労働省(当時は厚生省)がこのリスク低減効果について通知を出し、積極的な摂取を呼びかけるようになりました。
ただし、日本ではこの推奨にもかかわらず、サプリメントの摂取率が依然として低い水準にあり、神経管閉鎖障害の発生率が減少していないという課題も専門家から指摘されています。
そのため、未来の赤ちゃんのために、一人ひとりが意識して葉酸を摂取することがより一層重要になります。
厚生労働省がサプリメントでの摂取を強く推奨する根拠
「葉酸が大事なら、野菜をたくさん食べれば良いのでは?」と考えるのは自然なことです。
しかし、厚生労働省は、通常の食事に加えて、サプリメントから葉酸を摂取することを強く推奨しています。
これには明確な理由が2つあります。
第一の理由は、吸収率の違いです。
食品に含まれる葉酸は「ポリグルタミン酸型葉酸」と呼ばれ、熱に弱く調理過程で失われやすい上、体内での利用効率(生体利用率)が約50%とされています。
一方、サプリメントに含まれる葉酸は「モノグルタミン酸型葉酸」と呼ばれ、構造が安定しており、体内での利用効率が約85%と非常に高いのが特徴です。
つまり、同じ量の葉酸を摂るにしても、サプリメントの方がはるかに効率的に体に吸収されるのです。
第二の理由は、必要量を食事だけで安定的に確保するのが難しい点です。
神経管閉鎖障害のリスクを低減するために付加的に摂取すべき葉酸の量は1日400μg(マイクログラム)。
これを吸収率の低い食事性葉酸だけで補おうとすると、毎日大量の緑黄色野菜やレバーなどを食べ続けなければならず、現実的ではありません。
これらの理由から、確実なリスク低減のためには、安定して高吸収率の葉酸を摂取できるサプリメントの活用が最も合理的かつ効果的であると結論付けられています。
こうした理由から、具体的なおすすめの葉酸サプリを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
▼おすすめの葉酸サプリをチェックする
サプリメントでの摂取が重要とはいえ、数多くの製品の中から最適なものを選ぶのは大変です。
以下の記事では、厚生労働省が推奨するモノグルタミン酸型葉酸400μgをしっかり摂取できる、おすすめのサプリメントを厳選してご紹介しています。
【編集者のプロセス】
【いつからいつまで?】葉酸サプリの正しい摂取期間と摂取量

葉酸の重要性を理解した次に浮かぶ疑問は、「具体的に、いつからいつまで、どのくらい飲めば良いのか」でしょう。
このセクションでは、厚生労働省が示すガイドラインに基づき、あなたのライフステージに合わせた具体的な摂取期間と摂取量を解説します。
監修者からの注意喚起
妊活中(妊娠1ヶ月以上前)からが最も重要
- 推奨摂取量: 通常の食事から240μg + サプリメントから
最も葉酸を必要とするのは、妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの期間です。
神経管閉鎖障害のリスクを効果的に低減するためには、妊娠が成立する前から体内の葉酸濃度を十分に高めておく必要があります。
そのため、将来的に子どもを望むすべての女性は、妊活を始めた時点、あるいは妊娠を計画した時点から葉酸サプリメントの摂取を開始することが強く推奨されます。
パートナーと一緒に、将来の赤ちゃんのための準備として始めてみてはいかがでしょうか。
葉酸サプリをいつから飲み始めるべきか、より詳しいタイミングについてはこちらの記事で解説しています。
妊娠初期(〜12週)は赤ちゃんの体を形成する关键期
- 推奨摂取量: 通常の食事から240μg + サプリメントから
妊娠が判明してから妊娠12週末(妊娠3ヶ月末)までの期間も、妊活期と同様にサプリメントから400μgの葉酸を摂取し続ける必要があります。
この時期は、神経管だけでなく、心臓や脳など、赤ちゃんの体のあらゆる重要な部分が急速に形成される、まさにクリティカル・ウィンドウ(決定的に重要な時期)です。
つわりなどで食事が思うように摂れないこともあるかもしれませんが、サプリメントであれば負担なく必要な栄養素を補給できます。
妊娠中期・後期は母体と胎児の成長のために
- 推奨摂取量: 食事から240μg + 付加量240μg = 合計 480μg
妊娠中期(13週)以降になると、神経管閉鎖障害を予防するという第一の目的は完了します。
ここからは葉酸の役割が、増大する母体の血液(赤血球)を作ったり、胎盤や胎児自身の継続的な成長を支えたりすることへと変化します。
そのため、厚生労働省の指針では、サプリメントからの400μgという一律の付加は必須とされていません。
しかし、この時期も胎児は急速に成長し、母体も子宮や乳腺が発達し、血液量が増加します。
葉酸は赤血球の生産(造血)や細胞の増殖に不可欠なため、需要は依然として高いままです。
そのため、通常の推奨量に加えて240μgを付加することが推奨されています。
これは、食事から積極的に摂るか、必要に応じてサプリメントで補うと良いでしょう。
妊娠中期の葉酸サプリの必要性については、こちらの記事も参考にしてください。
授乳期は母乳を通じて赤ちゃんへ
- 推奨摂取量: 食事から240μg + 付加量100μg = 合計 340μg
出産後、授乳期においても葉酸の必要性は続きます。
お母さんが摂取した葉酸は母乳を通じて赤ちゃんに届けられ、赤ちゃんの健やかな発育をサポートします。
また、出産で体力を消耗したお母さん自身の体の回復や、貧血予防のためにも重要です。
この時期は、通常の推奨量に100μgを付加することが推奨されています。
産後の葉酸サプリの役割や、いつまで飲み続けるべきかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
▼【時期別】葉酸の推奨摂取量まるわかり比較表
| 時期 | 1日の推奨摂取量 | 内訳 | 摂取のポイント |
|---|---|---|---|
| 妊活中〜妊娠初期 | 食事 240μg + サプリ 400μg | 合計 640μg相当※ | サプリメントでの400μg摂取が強く推奨される最重要期間。 |
| 妊娠中期・後期 | 食事 240μg + 付加 240μg | 合計 480μg | 母体と胎児の成長のため。食事からの摂取を基本とし、必要ならサプリで補う。 |
| 授乳期 | 食事 240μg + 付加 100μg | 合計 340μg | 母乳を通じて赤ちゃんへ。母体の回復のためにも重要。 |
葉酸サプリの安全性:過剰摂取のリスクと副作用は?

「サプリメントで摂る」と聞くと、その安全性や副作用、過剰摂取のリスクについて気になる方もいらっしゃるでしょう。
このセクションでは、葉酸サプリの安全性について、客観的なデータを基に解説します。
結論として、定められた上限量を守っていれば、葉酸サプリの安全性は非常に高いと言えます。
監修者からのアドバイス
1日の耐容上限量は守りましょう
厚生労働省は、健康障害のリスクがないとされる習慣的な摂取量の上限として「耐容上限量」を設定しています。
サプリメントなどに含まれる「モノグルタミン酸型葉酸」の耐容上限量は、年齢によって異なり、18〜29歳の女性では900μg/日、30〜69歳の女性では1,000μg/日と設定されています。
妊活中や妊娠中に推奨される付加量400μgは、この上限量を大きく下回っており、安全な範囲内であることがわかります。
一方で、ほうれん草などの食品に含まれる「ポリグルタミン酸型葉酸」については、過剰摂取による健康障害の報告がないため、耐容上限量は設定されていません。
通常の食事で葉酸を摂りすぎる心配は、まずないと考えて良いでしょう。
注意すべきは、あくまでサプリメントや強化食品からの摂取量です。
考えられる副作用やデメリット
葉酸の摂取量が耐容上限量を大幅に超える状態が続いた場合、いくつかの健康リスクが指摘されています。
こうしたデメリットから、「葉酸サプリは飲まないほうがいい」という意見もありますが、その真相をこちらの記事で詳しく解説しています。
- 葉酸過敏症: まれに、発熱、じんましん、かゆみ、呼吸障害などのアレルギー症状(過敏症)が起こる可能性があります。
- ビタミンB12欠乏症の診断が困難になる可能性: ビタミンB12が不足すると、悪性の貧血や神経障害が起こることがあります。
葉酸を大量に摂取すると、この貧血の症状が表面上隠されてしまい、発見が遅れる危険性が指摘されています。
ただし、これは1日5,000μgを超えるような極端な量を摂取した場合の話であり、通常の推奨量を守っていれば心配はほとんどありません。
市販されている葉酸サプリメントは、1粒あたり400〜480μg程度に調整されているものが大半です。
製品の用法・用量を守って摂取する限り、過剰摂取のリスクは極めて低いと言えるでしょう。
妊娠以外にもある?葉酸の健康効果

これまで妊活・妊娠中における葉酸の重要性に焦点を当ててきましたが、葉酸は性別や年齢を問わず、すべての人にとって重要なビタミンB群の一員です。
ここでは、妊娠以外の健康効果について簡潔にご紹介します。
貧血の予防と改善
葉酸は、正常な赤血球を作るために不可欠な栄養素です。
「造血のビタミン」とも呼ばれ、同じくビタミンB群の仲間であるビタミンB12と協力して、血液の材料となるヘモグロビンの合成をサポートします。
葉酸が不足すると、赤血球がうまく作られなくなり、「巨赤芽球性貧血」という特殊な貧血を引き起こすことがあります。
動脈硬化リスクの軽減
葉酸は、血中のホモシステインというアミノ酸の濃度を正常に保つ働きがあります。
このホモシステインは、濃度が高まると血管の壁を傷つけ、動脈硬化を促進する悪玉物質として知られています。
葉酸を十分に摂取することは、ホモシステインの代謝を助け、結果として心筋梗塞や脳梗塞などのリスク軽減につながる可能性が期待されています。
男性や美容(肌)への効果は?
- 男性への効果: 近年、葉酸が男性の健康、特に精子の質に関与する可能性を示唆する研究も報告されています。
葉酸はDNAの合成に関わるため、正常な精子の形成をサポートするのではないかと考えられていますが、まだ研究段階であり、明確な結論は出ていません。 - 美容(肌)への効果: 葉酸は、新しい細胞が生まれるのを助ける働きがあります。
肌のターンオーバー(新陳代謝)は、まさに細胞の生まれ変わりそのものです。
そのため、葉酸を適切に摂取することは、皮膚や粘膜の健康を維持し、健やかな肌を保つ上で役立つと考えられます。
葉酸サプリに関するよくある質問(FAQ)

ここでは、葉酸サプリメントに関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で簡潔にお答えします。
Q. 「天然葉酸」と書かれたサプリの方が安全で効果が高いのでしょうか?
監修者からの解説
「天然葉酸」と「合成葉酸」の違いについては、こちらの記事でさらに詳しく比較しています。
Q. 葉酸サプリは「効果ない」って本当?
A. いいえ、それは誤解です。
「妊娠前から妊娠初期の女性が、適切な量のモノグルタミン酸型葉酸を摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが有意に低下する」という効果は、世界中の数多くの研究によって科学的根拠(エビデンス)が確立されています。
ただし、「飲むだけで必ず障害を防げる」というものではなく、あくまで「リスクを大幅に下げる」効果であると正しく理解することが重要です。
また、飲む時期や量が不適切であれば、期待される効果は得られません。
Q. 葉酸が多く含まれる食品は何ですか?
A. 葉酸は、その名の通り、葉物野菜に多く含まれています。
その他、豆類やレバーなどにも豊富です。ただし、食品に含まれる葉酸は水に溶けやすく熱に弱いため、茹でるなどの調理によって含有量が半分近く失われることがあります。
さらに、体内での吸収率もサプリメントに含まれる葉酸より低い(約50%)ため、食事だけで十分な量を摂取するのは容易ではありません。
この点を理解した上で、日々の食事の参考にしてください。
葉酸を多く含む食べ物の一覧は、こちらの記事で特集しています。
Q. サプリはいつ飲むのが効果的ですか?
A. 葉酸サプリメントは医薬品ではないため、「食前」「食後」といった厳密な飲む時間の決まりはありません。
葉酸は水溶性ビタミンであり、一度に大量に摂取しても余剰分は排出されてしまうため、毎日決まった時間に、継続して飲み続けることが最も重要です。
ご自身の生活リズムに合わせて、朝食後や就寝前など、忘れずに続けやすいタイミングを見つけることをおすすめします。
Q. 葉酸以外の栄養素も一緒に摂った方がいいですか?
A. はい、特に妊娠中は他の栄養素の需要も高まります。
葉酸の働きを助けるビタミンB12やビタミンB6、胎児の骨の形成に必要なビタミンD、そして貧血予防に不可欠な鉄分、胎児の発育に重要な亜鉛などは、葉酸と合わせて意識的に摂取したい栄養素です。
多くの妊活・マタニティ向けサプリメントには、これらの栄養素がバランス良く配合されています。
特に妊活中には亜鉛と葉酸を一緒に摂れるサプリも注目されています。
まとめ:未来の赤ちゃんのために、今日から正しい葉酸摂取を
この記事では、小児科専門医の竹綱先生監修のもと、葉酸サプリの重要性から具体的な摂取方法、安全性まで、科学的根拠に基づいて詳しく解説してきました。
最後に、大切なポイントをもう一度確認しましょう。
監修医からの最終アドバイス
監修者からのメッセージ
【最終チェック】葉酸サプリ摂取の要点チェックリスト
| チェック項目 | ✔ | ポイント |
|---|---|---|
| 目的 | ☐ | 胎児の神経管閉鎖障害リスクの低減が第一の目的。 |
| 開始時期 | ☐ | 理想は「妊娠1ヶ月以上前」から。将来妊娠を望むなら今日から。 |
| 摂取量 | ☐ | 妊活中〜妊娠初期は、食事とは別にサプリで 。 |
| 種類 | ☐ | サプリは吸収率の高い「モノグルタミン酸型」を選ぶ。 |
| 安全性 | ☐ | 用法・用量を守り、上限量(1,000μg/日)を超えなければ安全。 |
| 相談先 | ☐ | 不安な点や自分に合ったサプリ選びは、かかりつけの産婦人科医へ相談。 |
参考文献・情報ソース
- 厚生労働省: 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
- 厚生労働省: e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」
- 厚生労働省: 「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」(平成12年通知)
- 文部科学省: 「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
- こども家庭庁: 「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」
- 日本先天異常学会: 「葉酸サプリメントの摂取により神経管閉鎖障害の発症リスクを減らしましょう」
- 日本小児神経外科学会: 「声明文:葉酸摂取に関する取り組み」
- 日本産科婦人科学会: 「飲酒、喫煙、葉酸摂取による胎児異常発生について」
- 世界保健機関(WHO): Periconceptional folate supplementation to prevent neural tube defects
- 米国疾病予防管理センター(CDC): Use of Folic Acid for Prevention of Spina Bifida and Other Neural Tube Defects (1991 MRC Study Summary)














