【医師監修】中用量ピルでアフターピル代用は可能?ヤッペ法の飲み方と激しい副作用のリスクを解説
中用量ピル(プラノバールなど)を用いた緊急避妊法、通称「ヤッペ法」は、医学的に可能とされています。
しかし、現在主流の専用アフターピル(レボノルゲストレル法)と比較すると、「避妊成功率が低く、副作用(特に激しい吐き気)が非常に強い」 という大きなデメリットがあるため、第一選択としては推奨されていません。
それでも、金銭的な事情や病院へ行く時間が取れないなどの理由で、この方法を検討せざるを得ない状況にある方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、緊急避妊の最終手段としてヤッペ法を選択する方のために、失敗を防ぐための正確な飲み方 と、50%以上の確率で襲ってくる副作用への具体的な対処法 を、医師監修のもと徹底的に解説します。
この記事でわかること
- 1.中用量ピルを使った緊急避妊「ヤッペ法」の正確な飲み方とタイムリミット
- 2.半数の人が苦しむ「吐き気・頭痛」への対処法と、医師が懸念するリスク
- 3.「失敗しない」ために知っておくべき、専用アフターピルとの決定的な違い
中用量ピル(プラノバール)をアフターピルとして代用する「ヤッペ法」の飲み方

このセクションでは、あなたが今一番知りたいであろう「具体的な飲み方」について、余計な前置きを省いて直球でお伝えします。
まず大前提として、この方法は時間との勝負です。
迷っている間にも時間は経過し、避妊の成功率は刻一刻と低下していきます。
手元に薬があり、この方法を実行すると決めたのであれば、以下の手順を厳守してください。
【重要】
この方法は、性交後72時間(3日)以内 の開始が必須です。
72時間を過ぎてしまっている場合、この方法での効果は期待できません。
すぐに婦人科を受診し、120時間以内まで対応可能な「エラ(ウリプリスタル酢酸エステル)」などの処方を相談してください。
用意する薬と服用スケジュール
ヤッペ法で使用される一般的な薬剤は、中用量ピルである「プラノバール配合錠」です。
本来は月経困難症の治療や、生理日を移動させるために処方される薬ですが、女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)が含まれているため、緊急避妊に応用されます。
服用量
1回の服用につき 2錠 を使用します。
これを 2回 繰り返すため、合計で 4錠 が必要になります。
タイミング
以下の2ステップを必ず守ってください。
- 1回目:性交後(避妊失敗後)、72時間以内 に 2錠 服用する
- 2回目:1回目の服用から、ちょうど 12時間後 に 2錠 服用する
▼ 服用タイムラインの例
| ステップ | アクション | 具体例(性交が1月1日 22:00の場合) |
|---|---|---|
| Start | 避妊失敗(性交) | 1月1日 22:00 |
| Step 1 | 72時間以内にプラノバールを 2錠 服用 | 1月2日 09:00 に服用(推奨:なるべく早く!) |
| Wait | 12時間待機 | (副作用に備えて安静にする) |
| Step 2 | 1回目の 12時間後 にプラノバールを 2錠 服用 | 1月2日 21:00 に服用 |
| End | 完了 | 3週間後の生理(消退出血)を待つ |
特に重要なのは、2回目の服用を忘れないこと、そして12時間の間隔を正確に守ることです。
アラームをセットし、飲み忘れがないように徹底してください。
夜間に1回目を飲む場合、2回目は翌朝になるため、寝過ごしてしまうリスクがあります。
逆に朝に飲んだ場合は、夜の服用となります。
ご自身の生活リズムに合わせて、確実に飲める時間を計算することも大切ですが、何よりも優先すべきは「1回目をできるだけ早く飲むこと」です。
早く飲めば飲むほど、避妊の確率は上がります。
なぜ中用量ピルで妊娠を防げるのか?(仕組みの解説)
「たった数錠の薬で、なぜ妊娠を防げるの?」と疑問に思うかもしれません。
中用量ピルには、普段の自然な状態よりも高濃度の女性ホルモンが含まれています。
これを短期間に集中的に摂取することで、体内のホルモンバランスを急激に変化させ、以下の3つの作用を引き起こします。
- 排卵の抑制・遅延:
まだ排卵が起きていない場合、卵子が飛び出すのを止めたり、遅らせたりします。
精子が子宮内で待機していても、卵子が出会わなければ受精は起こりません。 - 受精の阻害:
子宮の入り口にある粘液の性状を変化させ、精子が子宮内部へ侵入するのをブロックします。
また、卵管の動きを変えて、卵子と精子が出会いにくくする作用もあります。 - 着床の阻害:
もし受精してしまった場合でも、受精卵が着床(妊娠成立)するためのベッドである「子宮内膜」の成熟を妨げます。
ベッドが整っていないため、受精卵は着床できずに体外へ排出される可能性が高まります。
簡単にイメージするなら、「強制的に妊娠しにくい身体環境を一時的に作り出し、妊娠をリセットする」ようなものです。
しかし、これはあくまで確率の問題であり、100%確実な魔法ではありません。
特に、排卵日付近や排卵直後であった場合、ヤッペ法の効果は著しく低下することが知られています。
監修医のアドバイス
【覚悟が必要】ヤッペ法の強烈な副作用と対処法

ヤッペ法を選択する上で、避けて通れないのが「副作用」の問題です。
専用のアフターピル(レボノルゲストレル錠)では副作用がほとんど出ないのに対し、ヤッペ法では中用量ピルというホルモン含有量の多い薬を使用するため、身体への負担が大きくなります。
「安く済むから」という理由だけで選ぶと、仕事や学校に行けないほどの体調不良に見舞われ、結果的に大きな代償を支払うことになるかもしれません。
ここでは、事前に知っておくべきリスクと、具体的な対処法を解説します。
2人に1人が苦しむ「吐き気・嘔吐」
ヤッペ法の最大の敵は、強烈な 「吐き気(悪心)」 と 「嘔吐」 です。
統計によると、ヤッペ法を行った女性の 約50%(2人に1人) が吐き気を訴え、約15% が実際に嘔吐してしまうと報告されています。
これは単なる「気持ち悪い」レベルではなく、「船酔いや二日酔いの最もひどい状態が数時間続く」感覚に近いです。
問題なのは、薬を飲んでからすぐに吐いてしまうと、成分が吸収されず、避妊に失敗してしまう という点です。
このリスクを回避するために、以下の対策を強く推奨します。
最強の対策:吐き気止め(制吐剤)を「先に」飲む
吐き気が来てから飲むのでは遅い場合があります。
ピルを服用する 30分前 に、吐き気止めを飲んでおきましょう。
- 処方薬: プリンペラン、ナウゼリンなど(プラノバールと一緒に処方されることが多いです)
- 市販薬: ドラッグストアで購入可能な胃腸薬や乗り物酔いの薬でも、ある程度の効果は期待できます(成分を確認し、薬剤師に相談してください)。
また、空腹時に服用すると胃への刺激が強くなるため、軽食(クラッカーやゼリーなど)をとってから服用することをお勧めします。
【よくある失敗例】「これくらい平気」が生んだ悲劇
実際にヤッペ法を試した方から非常によく聞かれるのが、「副作用を甘く見ていた」という後悔の声です。
例えば、金銭的な理由から手持ちのプラノバールで代用した、ある20代の女性のケースをご紹介します。
彼女は「少し気持ち悪くなる程度だろう」と高を括り、吐き気止めを用意せずに服用して出勤しました。
しかし服用から2時間後、通勤電車の中で立っていられないほどの激しい吐き気に襲われ、途中下車。
駅のトイレから1時間以上出られなくなり、結局その日は会社を欠勤することになってしまいました。
「数千円を節約したつもりでしたが、仕事を休み、タクシーで帰宅し、身体もボロボロ。こんなことなら最初から副作用の少ない専用薬を選べばよかった」
このような事態は、決して珍しいことではありません。 「自分は大丈夫」と思わず、万全の対策をしておくことが重要です。
頭痛・めまい・倦怠感へのケア
吐き気以外にも、頭痛、めまい、乳房の張り、倦怠感などが現れることがあります。
これらは、急激に体内のホルモンバランスが変動することによって引き起こされる「ホルモン離脱症状」や自律神経への影響です。
特に頭痛持ちの方は、誘発されやすいため注意が必要です。
服用後は、激しい運動や長風呂、アルコールの摂取は控え、できるだけ静かな部屋で横になって過ごせる環境を整えてください。
光や音に過敏になることもあるため、部屋を暗くしてスマホを見るのも控えた方が良いでしょう。
監修医のアドバイス
最も危険なリスク「血栓症」の初期症状
確率は非常に低いですが、ピル服用における最も重篤な副作用として 「血栓症」 があります。
これは血管の中に血の塊ができ、血管を詰まらせてしまう病気です。
中用量ピルは低用量ピルよりもエストロゲン量が多いため、わずかながらリスクが上がります。
以下の初期症状(ACHES)が現れた場合は、すぐに服用を中止し、救急車を呼ぶか救急外来を受診してください。
- A (Abdominal pain):激しい腹痛
- C (Chest pain):激しい胸痛、息苦しさ
- H (Headache):激しい頭痛
- E (Eye / Speech problems):視覚障害(目がかすむ)、言語障害
- S (Severe leg pain):ふくらはぎの痛み、むくみ、赤み
特に喫煙者(35歳以上で1日15本以上吸う人)や肥満の方、前兆のある片頭痛持ちの方は血栓症のリスクが高いため、本来であればヤッペ法(エストロゲンを含む薬)は禁忌(飲んではいけない)とされるケースが多いです。
「吐いてしまった!」その時の緊急対応(リミット別)
ヤッペ法の最難関は、「吐かずに薬を吸収させること」です。
しかし、万が一吐いてしまった場合どうすればよいのでしょうか。
パニックにならず、「服用してから何時間が経過していたか」 を確認してください。
この時間によって、追加服用の要否が変わります。
服用後2時間以内に嘔吐した場合
対応:追加服用が必要です。
服用から2時間以内であれば、薬の成分がまだ胃の中に残っているか、十分に吸収されていない可能性が極めて高いです。
このままでは避妊効果が得られません。
直ちに、吐いてしまった分と同じ量(2錠)を再度服用してください。
ここで問題になるのが、「手持ちの薬の予備があるか」です。
プラノバールが手元にギリギリ4錠しかない場合、追加服用ができなくなってしまいます。
その場合は、すぐに婦人科を受診して事情を説明するか、オンライン診療でアフターピルを処方してもらう必要があります。
また、一度吐いてしまった胃は非常に敏感になっています。
追加服用する際は、必ず吐き気止めを併用し、少し時間を空けて落ち着いてから飲むなどの工夫が必要です。
服用後2時間以上経過して嘔吐した場合
対応:原則として追加服用は不要です。
一般的に、薬を飲んでから2時間が経過していれば、成分の大半は吸収されたと考えられます。
そのため、基本的には追加で飲む必要はありません。
ただし、下痢がひどい場合や、錠剤の形が残ったまま吐いてしまった場合など、不安な要素があるときは自己判断せずに医師に相談することをお勧めします。
監修医のアドバイス
正直おすすめは?ヤッペ法 vs 専用アフターピル(レボノルゲストレル)

ここまでヤッペ法の飲み方とリスクについて解説してきましたが、ここで一度、冷静に立ち止まって考えてみてください。
「手元に薬があるから」「安いから」という理由でヤッペ法を選ぼうとしていますが、その選択は本当にあなたを守ってくれるのでしょうか?
現在、世界標準として推奨されている緊急避妊薬「レボノルゲストレル(ノルレボ錠など)」とヤッペ法を比較してみましょう。
▼ ヤッペ法 vs 専用アフターピル 比較表
| 比較項目 | ヤッペ法(中用量ピル代用) | レボノルゲストレル法(専用薬) |
|---|---|---|
| 妊娠阻止率 (失敗せず防げる確率) | 約 57 % (低い) | 約 80〜95 % (高い) |
| 副作用 (吐き気・嘔吐) | 約 50 % (非常に多い) | 数 % 以下 (ほとんどない) |
| 飲み方 | 2錠 × 2回(計4錠) 12時間間隔 | 1錠 × 1回のみ |
| 費用目安 | 5,000円程度 (診察代含む) | 12,000円程度 (診察代含む) |
| 入手方法 | 医師の処方 (古い方法のため非推奨の医院も) | 医師の処方 (オンライン診療含む) |
妊娠阻止率(失敗率)の決定的な差
表を見て最も注目すべきは、「妊娠阻止率」 の差です。
ヤッペ法の阻止率は約57%と言われています。
これは、「避妊しなかった場合に妊娠するはずだった人のうち、半分ちょっとしか防げない」という意味です。
逆に言えば、4割以上の確率で失敗する 可能性があるということです。
一方、専用薬であるレボノルゲストレル法は、早く飲めば飲むほど効果が高く、平均して80%以上、24時間以内の服用であれば95%以上の阻止率が期待できます。
「半分の確率で失敗し、しかも吐き気に苦しむ方法」と、「高い確率で成功し、副作用もほとんどない方法」。
数千円の差額はありますが、万が一妊娠してしまった場合の中絶手術の費用(10〜20万円)や、身体的・精神的な苦痛を考えれば、どちらが本当に「コストパフォーマンスが良い」かは明白ではないでしょうか。
トータルコストと「安心」の比較
ヤッペ法は1970年代に考案された古い方法であり、より安全で効果的な薬が開発された現在では、WHO(世界保健機関)も日本産科婦人科学会も、「レボノルゲストレル法が利用できない場合の代替案」 という位置付けにしています。
つまり、基本的には推奨されていません。
もしあなたが、「絶対に妊娠したくない」「副作用で仕事を休みたくない」と強く願うのであれば、多少無理をしてでも専用のアフターピルを選択することを強くお勧めします。
現在はオンライン診療も普及しており、スマホ一つで診察を受け、最短翌日にはバイク便や郵送で薬が届くサービスも増えています。
誰にも会わずに、バレずに、確実な薬を手に入れるルートは存在します。
監修医のアドバイス
よくある質問(FAQ)
最後に、ヤッペ法や緊急避妊に関して、当クリニックでもよく耳にする質問にお答えします。
疑問を解消し、不安を少しでも減らしてください。
Q. 低用量ピル(トリキュラーやマーベロン)でも代用できますか?
A. 理論上は可能ですが、自己判断は極めて危険ですのでやめてください。
低用量ピルは中用量ピルよりもホルモン量が少ないため、代用するには一度に大量の錠剤(例えば1回4錠〜5錠など)を飲む必要があります。
しかし、薬の種類(1相性や3相性)によって飲むべき錠剤の色や数が異なり、計算が非常に複雑です。
飲み間違えれば避妊効果は得られませんし、大量服用による副作用のリスクも未知数です。
ネット上の不確かな情報を頼りに自己流で飲むことは、ギャンブルに等しい行為です。
Q. ピルと一緒に飲んではいけない薬はありますか?
A. はい、効果を弱めてしまう薬があります。
併用に注意が必要な主な薬や食品は以下の通りです。
- 抗生物質(ペニシリン系、テトラサイクリン系など):腸内細菌のバランスを変え、再吸収を妨げる可能性があります。
- 抗てんかん薬(フェノバルビタール、フェニトインなど):ピルの代謝を早め、効果を下げてしまいます。
- セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート):気分を落ち着けるサプリメントとして市販されていますが、ピルの効果を著しく低下させます。
常用薬がある場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。
Q. 消退出血(生理)はいつ来ますか?
A. 通常、服用後3日〜3週間以内に来ます。
ヤッペ法が成功していれば、服用してから数日〜3週間程度で、生理のような出血(消退出血)が起こります。
これが来れば、「とりあえず今回の妊娠は回避できた」というサインになります。
ただし、出血の量や期間には個人差があり、通常の生理よりも少ない場合や短い場合もあります。
逆に、3週間を過ぎても出血がない場合や、出血があってもいつもと様子が違う(極端に少ない、腹痛がひどいなど)場合は、避妊失敗や子宮外妊娠の可能性があります。
監修医のアドバイス
まとめ:緊急時は迷わず最善の選択を
この記事では、中用量ピルを使った緊急避妊法「ヤッペ法」について、その手順とリスクを包み隠さずお伝えしました。
要点を整理します。
- ヤッペ法は 72時間以内 に 2錠、その 12時間後 に 2錠 を飲む必要がある。
- 副作用(吐き気) は50%の確率で発生するため、吐き気止めの併用 が必須。
- 妊娠阻止率は 約57% と低く、専用薬(阻止率80%以上)に比べて確実性は劣る。
ヤッペ法は、あくまで「どうしても専用薬が手に入らない時の代用策」です。
あなたの身体と未来を守るために、今の状況で選べる「最善の選択」をしてください。
もし、副作用への不安や、失敗への恐怖が少しでもあるのなら、無理に手持ちの薬で済ませようとせず、医療機関を頼ってください。
医師はあなたを責めたりしません。
あなたの不安を取り除き、最適な方法を提案するためにそこにいます。
緊急避妊法 最終チェックリスト
以下のリストを確認し、行動を決めてください。
- [ ] 避妊失敗から 72時間以内 である。
- [ ] 2回の服用時間を正確に守れるスケジュールが組める。
- [ ] もし激しい吐き気に襲われても、学校や仕事を休める(または休日である)。
- [ ] 約4割の失敗リスク があることを理解し、受け入れられる。
もし一つでもチェックがつかない、あるいは不安が残る場合は、迷わず 「専用アフターピル(レボノルゲストレル)」 の処方を検討してください。















