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【医師監修】葉酸との飲み合わせNGリスト|薬・サプリ・お茶の影響と対処法

【医師監修】葉酸との飲み合わせNGリスト|薬・サプリ・お茶の影響と対処法

結論:葉酸は多くの薬と併用可能だが、特定の処方薬には厳重注意が必要。

葉酸サプリメントは、基本的には食品の一種であるため、多くの医薬品と併用しても問題ありません。

しかし、抗てんかん薬やリウマチ薬など、特定の処方薬に関しては、葉酸が薬の効果を弱めてしまったり、逆に薬が葉酸の働きをブロックしてしまったりする重大な「相互作用」が存在します。

また、私たちが日常的に手にする市販の頭痛薬や胃薬、そしてお茶に含まれる成分であっても、飲むタイミングによっては葉酸の吸収率を下げてしまうことがあります。

この記事では、医師監修のもと、これから生まれてくる赤ちゃんの健康を守るために知っておくべき「葉酸との飲み合わせ」に関する正しい知識を、網羅的に解説します。

この記事でわかること

  • 1.小児科専門医が解説する「赤ちゃんのために」避けるべき飲み合わせ
  • 2.【処方薬・市販薬別】葉酸との併用OK・注意・NG 判定リスト
  • 3.うっかり併用を防ぐための正しい服用タイミングと間隔

目次
  1. なぜ「飲み合わせ」が赤ちゃんの未来に関わるのか?
  2. 【処方薬編】医師への確認が必須!葉酸と相性が悪い医薬品リスト
  3. 【市販薬編】頭痛薬・風邪薬・胃薬との併用は?
  4. 【サプリ・食品編】「過剰摂取」と「吸収阻害」の落とし穴
  5. これで安心!飲み合わせリスクを回避する「2時間の法則」
  6. 葉酸サプリと飲み合わせに関するQ&A
  7. まとめ:自己判断せず、迷ったら「お薬手帳」を持って医師へ相談を

なぜ「飲み合わせ」が赤ちゃんの未来に関わるのか?

妊娠中に葉酸を摂取することの重要性は、多くのプレママが認識していることでしょう。

しかし、「なぜ薬と一緒に飲んではいけない場合があるのか」「飲み合わせが悪いと具体的にどうなるのか」という点まで深く理解している方は、意外と少ないのが現状です。

単に「サプリの効果が薄れるから、もったいない」というレベルの話であれば、それほど深刻になる必要はないかもしれません。

しかし、葉酸と薬の飲み合わせ問題は、お腹の赤ちゃんの神経発達や、母体の持病のコントロールに関わる、生命医学的なリスクを含んでいるのです。

まずは、そのメカニズムとリスクの正体を、小児科医の視点から正しく理解しましょう。

葉酸の吸収が阻害されると起こる「神経管閉鎖障害」のリスク

葉酸は、赤ちゃんの脳や脊髄のもととなる「神経管」が作られる妊娠初期に、細胞分裂を助ける必須の栄養素です。

もし、特定の薬との飲み合わせによって体内の葉酸濃度が極端に下がってしまうと、この神経管がうまく閉じない「神経管閉鎖障害」という先天異常のリスクが高まることが知られています。

これは、二分脊椎(背骨が割れて神経が露出する状態)や無脳症といった、赤ちゃんの生涯に関わる重大な疾患です。

せっかく葉酸サプリを飲んでいても、飲み合わせの悪い薬によってその吸収がブロックされてしまっては、サプリを飲んでいないのと同じ状態、あるいはそれ以上に欠乏した状態になりかねないのです。

監修医のアドバイス

「小児科医として日々多くのお子さんを診察していますが、神経管閉鎖障害は、妊娠初期の葉酸摂取によってリスクを大幅に減らせることが科学的に証明されている数少ない先天異常の一つです。お母さんが『良かれと思って』飲んでいるサプリメントが、実は飲み合わせによって効果を発揮できていなかった、という事態は絶対に避けなければなりません。逆に言えば、正しい知識を持ってコントロールすれば、赤ちゃんのリスクは確実に減らせるということです。不安になりすぎる必要はありませんが、正しい知識を持つことが、赤ちゃんへの最初のプレゼントになりますよ」

「相互作用」の2つのパターン(吸収阻害と薬効減弱)

薬と葉酸の「相性が悪い」といっても、その現れ方は大きく分けて2つのパターンがあります。

自分が心配している組み合わせがどちらのパターンに当てはまるのかを知ることで、対策も立てやすくなります。

葉酸と薬の相互作用の仕組みを示す図解。左側の「パターンA」は、抗てんかん薬やお茶の成分が消化管で葉酸の吸収を阻害し、赤ちゃんに届かなくなる様子。右側の「パターンB」は、葉酸がリウマチ薬などの働きをブロックし、薬の効果が弱まって母体の持病が悪化する様子を説明している。

パターンA:葉酸が体に入らなくなる(サプリが無駄になる)

これは、薬の成分が葉酸と結合して吸収を邪魔したり、葉酸を体内で使える形に変換する酵素の働きを止めてしまったりするケースです。

結果として、母体の血中葉酸濃度が上がらず、赤ちゃんに十分な葉酸が届かなくなります。

抗てんかん薬の一部や、日常的な飲み物であるお茶(タンニン)などがこれに該当します。

この場合、対策としては「葉酸の摂取量を増やす」ことや「飲む時間をずらす」ことが有効になります。

パターンB:薬の効き目が悪くなる(持病が悪化する)

こちらは、葉酸を摂取することで、逆に薬の効果が弱まってしまうケースです。

特定の病気の治療薬は、「体内の葉酸の働きを抑えること」で病気の進行(異常な細胞増殖など)を止める仕組みのものがあります。

そこに外部から大量の葉酸サプリを追加してしまうと、薬の効果が打ち消され、母体の病気が悪化してしまうリスクがあるのです。

関節リウマチの薬などが代表例です。

この場合、自己判断でサプリを飲むことは非常に危険であり、必ず主治医の指示に従う必要があります。


【処方薬編】医師への確認が必須!葉酸と相性が悪い医薬品リスト

ここでは、病院で処方される医薬品(処方薬)の中で、特に葉酸との相互作用に注意が必要なものをリストアップします。

これらは、自己判断で「時間をずらせば大丈夫だろう」と安易に併用してはいけない、管理レベルの高い薬剤です。

もし現在服用中の薬がこのリストにある場合は、サプリメントの摂取を開始する前に、必ずかかりつけの医師または薬剤師に「葉酸サプリを飲んでも良いか」を確認してください。

【処方薬編】医師への確認が必須な、葉酸との飲み合わせリスク判定表。抗てんかん薬(アレビアチンなど)はHighリスク(要相談)、抗リウマチ薬(リウマトレックス)はHighリスク(禁忌/要相談)、潰瘍性大腸炎治療薬(サラゾピリン)はMidリスク(注意)、経口避妊薬(ピル)はLowリスク(軽度)と分類され、それぞれの対処法が記載されている。

▼ 処方薬×葉酸 飲み合わせリスク判定表

薬剤分類一般名(成分名)主な商品名リスク度解説・対処法
抗てんかん薬フェニトインアレビアチン, ヒダントールHigh (要相談)薬が葉酸の分解を促進し、葉酸不足を招く。逆に葉酸摂取で発作リスクが増す報告もあり。医師の管理下での摂取が必須。
抗てんかん薬フェノバルビタールフェノバールHigh (要相談)同上。葉酸欠乏による貧血のリスクも。
抗てんかん薬バルプロ酸ナトリウムデパケン, セレニカHigh (要相談)葉酸代謝を阻害し、神経管閉鎖障害のリスクを高める可能性が指摘されている。
抗リウマチ薬メトトレキサートリウマトレックス, メソトレキセートHigh (禁忌/要相談)葉酸の働きを止めることで治療効果を出す薬。自己判断でのサプリ併用は治療効果を著しく下げるため厳禁。
潰瘍性大腸炎治療薬サラゾスルファピリジンサラゾピリンMid (注意)腸管での葉酸の吸収を阻害する作用がある。葉酸の増量が必要になるケースが多い。
経口避妊薬ピルマーベロン, トリキュラーなどLow (軽度)長期服用により血清葉酸値が低下する傾向がある。妊活開始直後などは特に意識して葉酸摂取を推奨。

【併用注意・禁忌】抗てんかん薬(フェニトイン・フェノバルビタールなど)

「てんかんの薬」と「葉酸」は、相性がとても難しい関係にあります。 

あちらを立てればこちらが立たず、という「いたちごっこ」になりやすいのです。

1. 薬が「葉酸」を消してしまう てんかんの薬には、体の中の葉酸をどんどん壊してしまう性質があります。そのため、市販のサプリ(0.4mg)を飲んでいても、赤ちゃんに必要な量が体に残りません。

2. 葉酸が「薬」を追い出してしまう 「じゃあ、たくさんサプリを飲めばいいの?」と思うかもしれませんが、それが一番危険です。 葉酸を一度にたくさん摂りすぎると、今度はてんかんの薬の効果を弱めてしまい、抑えられていた発作が急に起きてしまうことがあるのです。お母さんが発作を起こすと、赤ちゃんも酸欠状態になり大変危険です。

つまり、「普通の量では足りないけれど、勝手に増やすと発作が起きてしまう」という、非常に調節が難しい状態なのです。 

だからこそ、自己判断でサプリを買って飲むのではなく、必ず主治医に「私にちょうどいい量」を計算してもらい、処方された葉酸を飲む必要があります。

監修医の解説

「抗てんかん薬を服用されている方は、『薬の影響が赤ちゃんに出ないか』と非常に不安を感じておられると思います。確かに薬による葉酸濃度への影響は無視できませんが、自己判断で薬を止めてしまい、発作が起きて低酸素状態になることの方が、赤ちゃんにとっては遥かに危険です。現在の医療では、適切な葉酸の補充を行うことで、リスクを最小限にコントロールすることが可能です。『薬を飲んでいるからサプリは怖い』ではなく、『薬を飲んでいるからこそ、医師の指導の下で正しく葉酸を補う』という意識を持ってください」

【絶対禁忌】リウマチ・抗がん薬(メトトレキサート)

関節リウマチや乾癬の治療に使われる「メトトレキサート(MTX)」は、葉酸との関係が最も深い薬剤です。 

この薬は、「葉酸の働きを強力にブロックすること」で、異常な免疫細胞やがん細胞の増殖を抑える仕組みです。

そのため、治療中に自己判断で葉酸サプリを飲んでしまうと、薬の効果が消えて病気が悪化します。

逆に、妊娠中にこの薬が体に残っていると、赤ちゃんに重篤な影響(メトトレキサート胎児症)を与えてしまいます。

重要なのは「休薬期間」です。 

メトトレキサートは体から抜けるのに時間がかかります。

妊娠を計画する少なくとも3ヶ月前には服用を中止し、その間十分な葉酸補充を行う必要があります。 

「妊娠したから薬を止める」では遅いため、必ずリウマチ科と産婦人科の連携のもとで計画を立ててください。

その他注意が必要な処方薬(ピル、抗生物質の一部など)

命に関わるほどの強い相互作用ではありませんが、長期的な服用によって体内の葉酸レベルを下げる薬は他にもあります。

例えば、ピル(経口避妊薬)です。

ピルに含まれるエストロゲンは、葉酸の吸収や代謝に影響を与え、血中濃度を低下させることが知られています。

ピルの服用をやめてすぐに妊活を始める場合(いわゆるリバウンド妊娠狙いなど)や、長期間ピルを服用していた方が妊娠した場合は、体内の葉酸貯蔵量が少なくなっている可能性があります。

そのため、妊娠前から意識的に葉酸サプリメントを摂取し、体内のベースラインを整えておくことが推奨されます。

また、一部の抗生物質(トリメトプリムなど)や、潰瘍性大腸炎に使われるサラゾスルファピリジンも、葉酸の吸収を阻害する作用があります。

風邪や膀胱炎などで一時的に抗生物質が出された程度であれば、数日の服用で深刻な葉酸欠乏になることは稀ですが、長期服用が必要な場合は医師に相談しておくと安心です。


【市販薬編】頭痛薬・風邪薬・胃薬との併用は?

次に、ドラッグストアで購入できる市販薬(OTC医薬品)との飲み合わせについて解説します。

妊娠中であっても、急な頭痛や風邪、胃もたれに悩まされることはあります。

「サプリを飲んでいる期間に、市販薬を飲んでも大丈夫?」という疑問は、多くの妊婦さんが抱える共通の悩みです。

基本的には、「用法用量を守れば併用は可能だが、飲むタイミングはずらすのがベター」というのが結論になります。

解熱鎮痛剤(ロキソニン・イブ・バファリン・カロナール)

頭痛や生理痛(妊活中)、発熱時によく使われる解熱鎮痛剤ですが、これらと葉酸サプリの間に、直接的な危険な相互作用(化学変化など)は報告されていません。

したがって、頭痛薬を飲んだ日に葉酸サプリを飲んでも、基本的には問題ありません。

ただし、妊娠中の鎮痛剤選びそのものには注意が必要です。

ロキソプロフェン(ロキソニン)やイブプロフェン(イブ、バファリンルナなど)といった「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」と呼ばれる成分は、妊娠後期に服用すると赤ちゃんの心臓の血管(動脈管)に影響を与える可能性があるため、使用できる時期が限られます。

一方で、アセトアミノフェン(カロナール、タイレノールなど)は、妊娠全期間を通じて比較的安全に使用できるとされています。

「飲み合わせ」よりも「妊娠時期による使い分け」が重要です。 

ロキソニンやイブなどの「NSAIDs」が、直接的に葉酸の吸収を邪魔するという強いデータはありません。

しかし、これらは妊娠後期(20週以降)に使用すると、赤ちゃんの心臓の血管に悪影響を与えるリスクがあるため、注意が必要です。

葉酸サプリとの相性を気にする以前に、妊娠中は時期を問わず安心して使える「アセトアミノフェン」を選ぶことが、回り回ってリスク回避につながります。

監修医の補足

「妊娠中はホルモンバランスの変化で頭痛が起きやすいものです。痛みを我慢しすぎてストレスを溜めるのも良くありませんが、自己判断での市販薬の連用は避けましょう。葉酸サプリとの併用自体はあまり神経質にならなくて大丈夫ですが、妊娠中に使える鎮痛剤の種類については、必ず産婦人科で確認しておいてください。アセトアミノフェンであれば、小児科でもよく処方する安全性の高いお薬ですので、比較的安心してお使いいただけます」

胃薬・便秘薬(制酸剤・酸化マグネシウム)

つわり時期や妊娠後期には、胃酸の逆流や胃痛、便秘に悩まされる方が増えます。

ここで注意が必要なのが、胃酸を中和するタイプの胃薬(制酸剤)です。

葉酸は「胃酸」の助けがないと吸収されません。 

葉酸が小腸で吸収されるためには、胃の中が「健康な酸性」である必要があります。

しかし、胃薬(制酸剤)で胃酸を中和したり抑えたりしてしまうと、葉酸を体内に取り込むための入り口(トランスポーター)がうまく働かなくなります。 

「混ざると危険」なのではなく、「吸収される環境が整わない」ことが問題です。

そのため、胃薬の効果が落ち着く時間を考慮し、サプリメント摂取とは2時間以上の間隔を空けることが医学的に推奨されています。

また、便秘薬として処方されることも多い「酸化マグネシウム」も同様のアルカリ性製剤です。

これらを服用する場合は、同時摂取は避け、少なくとも2時間は間隔を空けるようにしましょう。

サプリメントは胃酸がしっかり出ている食後に飲み、胃薬はその数時間後や食間に飲む、といった工夫が有効です。

アレルギー薬・花粉症薬(アレグラ・アレジオンなど)

花粉症や鼻炎持ちの方にとって、アレルギー薬は手放せない存在です。

フェキソフェナジン(アレグラ)やエピナスチン(アレジオン)といった第2世代抗ヒスタミン薬と、葉酸サプリとの間に、明確な相互作用による悪影響の報告は現時点ではほとんどありません。

併用しても、葉酸の効果が極端に落ちたり、副作用が出たりする心配は少ないと考えられます。

ただし、妊娠中のアレルギー薬の使用に関しては、薬の成分が胎盤を通過することへの配慮から、医師によって見解が異なる場合があります。

葉酸との相性よりも、「妊娠中のアレルギー薬服用」そのものの安全性について、まずは主治医に確認を取ることが最優先です。

医師から「この薬なら飲んでOK」と許可が出ているのであれば、葉酸サプリと併用しても問題ありません。


【サプリ・食品編】「過剰摂取」と「吸収阻害」の落とし穴

「薬じゃないから大丈夫」と油断しがちなのが、他のサプリメントや日常の飲み物との組み合わせです。

実は、健康意識の高い妊婦さんほど陥りやすいのが、良かれと思って複数のサプリを飲み、特定の栄養素が過剰になってしまうパターンや、飲み物によってせっかくの栄養を無駄にしてしまうケースです。

【市販薬・食品編】飲み合わせイラストマップ。「時間をずらす」「水で飲む」が基本ルール。頭痛薬や胃薬は葉酸サプリと服用時間をずらすこと、お茶やコーヒーは避けて水で飲むこと、複数のサプリ併用は過剰摂取や吸収阻害に注意が必要であることをイラストで解説している。

複数のサプリ併用は危険!ビタミンAと亜鉛の過剰・阻害

葉酸サプリには、葉酸以外にも鉄分、カルシウム、ビタミン類が含まれている「マルチ栄養タイプ」のものが多く販売されています。

これ単体であればバランスが考えられていますが、例えば「美容のためにビタミン剤も飲む」「貧血気味だから鉄剤も追加する」といった具合に、複数のサプリメントを併用すると、成分が重複してしまいます。

特に注意が必要なのが「脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)」です。

水溶性ビタミン(葉酸、ビタミンB群、C)は摂りすぎても尿として排出されますが、脂溶性ビタミンは体内に蓄積されやすく、過剰摂取による副作用のリスクがあります。

中でもビタミンAの妊娠初期の過剰摂取は、赤ちゃんの奇形リスクを高める可能性があるため、上限量には十分な注意が必要です。

また、「亜鉛」と葉酸の関係にも注意が必要です。

亜鉛は細胞分裂に必要な重要なミネラルですが、高用量の亜鉛サプリメントを摂取すると、小腸で葉酸の吸収を阻害してしまうことがあります。

逆に、大量の葉酸が亜鉛の吸収を妨げ、亜鉛欠乏(味覚障害など)を招くという報告もあります。

「たくさん飲めば体に良い」わけではありません。

基本的には、妊婦向けに設計された葉酸サプリを1種類だけ規定量飲み、追加のサプリは医師の指示がない限り控えるのが最も安全です。

緑茶・コーヒー・紅茶(カフェイン・タンニン)との相性

サプリメントを飲むとき、「手元にあったお茶で流し込む」ということをしていませんか? 

実は、お茶やコーヒーに含まれる成分には、葉酸の「吸収」「活用」「排出」のすべてにおいてマイナスの影響を与える可能性があります。

まず、緑茶、紅茶、コーヒー、ウーロン茶などに含まれる渋み成分「タンニン」は、葉酸や鉄分と結合し、水に溶けにくい物質へと変化させる性質があります。 

これにより、小腸での吸収率が低下してしまう可能性があります。

特に、葉酸サプリには鉄分も配合されていることが多いため、タンニンの影響はダブルで受けることになります。

さらに、緑茶の「カテキン」も無視できない存在です。

 最近の研究では、カテキンには葉酸を体内で使える形にする酵素の働きを邪魔する作用があることが分かっています。

これは、弱いながらも抗リウマチ薬(メトトレキサート)と似たようなメカニズムです。 

つまり、お茶でサプリを飲む行為は、タンニンで吸収を邪魔され、カテキンで働きを邪魔されるという「二重のマイナス」になりかねないのです。

また、カフェイン自体にも利尿作用があり、水溶性ビタミンである葉酸やビタミンCを尿と一緒に体外へ排出するスピードを早めてしまう可能性もあります。

せっかくの栄養素を無駄にしないための正解は、「コップ1杯の常温の水、または白湯(さゆ)」で飲むことです。 

もしお茶やコーヒーを楽しみたい場合は、サプリメント摂取の前後1時間程度は避けるのが理想的です。 

ちなみに、最近増えている「カフェインレスコーヒー(デカフェ)」であっても、タンニンは含まれていることが多いので、やはりサプリを飲むための水代わりにするのは避けた方が無難です。


これで安心!飲み合わせリスクを回避する「2時間の法則」

ここまで様々なNG例や注意点を見てきて、「なんだか難しくて覚えられない」「いちいち調べるのが面倒」と感じた方もいるかもしれません。

そんな方のために、小児科医や薬剤師も推奨する、シンプルで最強のリスク回避ルールをお伝えします。

それは、「薬とサプリは、前後2時間空ける」というルールです。

薬とサプリの間隔は「前後2時間」空けるのが鉄則

ほとんどの飲み薬やサプリメントは、服用してから胃で溶け、小腸へ送られて吸収されるまでに、およそ30分から2時間程度の時間を要します。

血中の濃度がピークに達する時間(Tmax)も、多くの薬で服用後1〜2時間前後です。

つまり、「ある薬を飲んでから2時間経てば、その成分の多くはすでに吸収プロセスに入っており、胃の中には残っていない」という状態になります。

このタイミングで次のものを飲めば、胃の中で成分同士が混ざり合い、直接反応して吸収を邪魔し合うリスクを大幅に減らすことができるのです。

飲み合わせリスクを回避する「2時間の法則」を示したタイムライン。朝8時に朝食と処方薬を摂取し胃の中で混ざる様子と、そこから2時間空けた10時に葉酸サプリを水で飲み、胃の中で混ざらずに吸収される様子を時系列で比較したイラスト。
  • 朝食後(8:00): 病院の処方薬や、いつもの胃薬を飲む
  • (2時間空ける)
  • おやつの時間(10:00): 葉酸サプリを水で飲む

このように時間を分離するだけで、相互作用の悩みは大部分が解決します。

もちろん、医師から厳密な時間指定がある薬(食前、食間など)はその指示に従う必要がありますが、サプリメントはいつ飲んでも良い食品ですので、薬の時間を優先し、サプリを動かすことで調整しましょう。

監修医のアドバイス

「『2時間空ける』というのは、胃の中での滞留時間を考慮した、非常に理にかなった安全策です。診察室でも、『サプリをいつ飲めばいいかわからない』という質問には、まずこの方法をお勧めしています。これなら、薬の効果もしっかり得られ、サプリの栄養も無駄になりません。難しく考えすぎず、この『2時間ルール』をお守りのように覚えておいてください」

つわりで「飲める時にしか飲めない」場合の対処法

とはいえ、妊娠初期はつわりが酷く、「2時間待っていたら気持ち悪くなって飲めない」「吐いてしまう」という日もあるでしょう。

そんな時は、ルールに縛られすぎてストレスを溜める必要はありません。

葉酸は数日間飲まなかったからといって、すぐに体内の貯金がゼロになるわけではありませんし、1回薬と一緒に飲んでしまったからといって、直ちに赤ちゃんに障害が出るわけでもありません。

「飲める時に飲む」「飲めるものを飲む」が、つわり時期の最大の正解です。

もし吐き気がひどい場合は、一時的にサプリを休み、葉酸を含む食品(イチゴや枝豆、ほうれん草など)を口にできる範囲で食べるだけでも十分です。

また、サプリメントの粒の大きさや匂いが辛い場合は、無理せず別の飲みやすい商品に変えることも検討してください。

神経質になりすぎてお母さんが精神的に追い詰められることが、赤ちゃんにとって一番のストレスになります。

「今日は調子が良いから、2時間空けて飲んでみようかな」くらいの、ゆるやかな気持ちで継続することが大切です。


葉酸サプリと飲み合わせに関するQ&A

最後に、よくあるニッチな疑問について、Q&A形式で簡潔にお答えします。

Q. 漢方薬との飲み合わせは?(当帰芍薬散など)

A. 基本的には併用可能ですが、時間を空けるのが安心です。

妊娠中によく処方される「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」などの漢方薬と、葉酸サプリとの間に重大な相互作用は報告されていません。

しかし、漢方薬の種類によっては「甘草(カンゾウ)」などを含み、複数のサプリと合わせることで成分が重複する場合も考えられます。

また、漢方薬独特の味がつわりの時期には刺激になることもあるため、やはり2時間程度の間隔を空けて飲むことをお勧めします。

Q. 夫(男性)が飲む場合も薬との併用に注意が必要?

A. 男性の場合も、抗てんかん薬など一部の薬には注意が必要です。

最近は「妊活葉酸」としてご夫婦で飲まれるケースも増えています。

男性の場合、精子の質を高めるために葉酸を摂取しますが、フェニトインなどの抗てんかん薬や、特定の持病の薬を服用している場合は、女性同様に薬の効果に影響を与える可能性があります。

男性も持病の薬がある場合は、主治医に「妊活のために葉酸サプリを飲みたい」と一言確認しておくと確実です。

Q. うっかり薬と一緒に飲んでしまった!どうすればいい?

A. 1回の失敗でパニックになる必要はありません。次から気をつけましょう。

記事の中で注意喚起をしてきましたが、相互作用の多くは「長期間、継続的に併用した場合」にリスクが高まるものです。

一度や二度、うっかり時間を空けずに飲んでしまったからといって、すぐに薬の効果が消えたり、赤ちゃんに異常が出たりするわけではありません。

焦って吐き出したり、自己判断で薬を追加で飲んだりすることの方が危険です。

「次からは気をつけよう」と気持ちを切り替えれば大丈夫です。

万が一、体調に異変を感じた場合は、かかりつけ医に相談してください。


まとめ:自己判断せず、迷ったら「お薬手帳」を持って医師へ相談を

葉酸と薬の飲み合わせについて解説してきましたが、最も大切なポイントは以下の3点です。

  1. 抗てんかん薬・リウマチ薬などは「医師への相談」が絶対条件
  2. 市販薬やお茶との併用は「時間をずらす(2時間ルール)」で解決
  3. 不安なことは自己判断せず、専門家(医師・薬剤師)に聞く

妊娠中は、お母さんの体とお腹の赤ちゃんの2つの命を守る大切な時期です。

ネットの情報だけで判断して薬を止めたり、逆に危険な飲み合わせを続けたりすることは避けましょう。

健診の際や、薬局で薬を受け取る際に、「今、この葉酸サプリを飲んでいるのですが、このお薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?」と、お薬手帳とサプリのパッケージを見せながら聞くのが、最も確実で安心できる方法です。

竹綱先生をはじめとする医師たちは、赤ちゃんの未来を守ろうとするお母さんのその質問を、心から歓迎してくれます。

正しい知識とちょっとした工夫で、安心・安全なマタニティライフを送り、元気な赤ちゃんを迎える準備を整えていきましょう。

【保存版】葉酸×飲み合わせチェックリスト

最後に、この記事の要点をまとめたチェックリストを用意しました。スクリーンショットを撮って、日々の確認にお役立てください。

▼ 飲み合わせ最終チェックリスト

スマートフォンの画面に表示された【保存版】飲み合わせ最終チェックリスト。「処方薬の確認」「サプリの重複確認」「お茶での服用回避」「時間の間隔(薬から2時間)」「医師への相談(お薬手帳持参)」の5項目を確認するためのチェックボックスリスト。

参考文献

この記事の監修者

  • 平成16年
    愛知医科大学医学部卒業、愛知医科大学病院 卒後臨床研修医
  • 平成18年
    愛知医科大学病院 小児科入局
  • 平成23年
    愛知医科大学小児科 助教
  • 平成25年
    医療法人和幸会 阪奈中央病院勤務(小児科)
  • 平成29年
    たけつな小児科クリニック開院
  • 日本小児科学会(専門医/指導医)
  • 日本外来小児科学会
  • 日本小児科医会(地域総合小児医療認定医)
  • 日本小児神経学会
  • 日本頭痛学会

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