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オンラインピルは血液検査なしでも安全?必須なケースと健康診断の活用術

オンラインピルは血液検査なしでも安全?必須なケースと健康診断の活用術

「オンライン診療でピルを始めたいけれど、血液検査なしで処方されて本当に大丈夫?」「血栓症のリスクが怖いから、やっぱり病院に行かないとダメ?」

忙しい毎日の中で、手軽なオンライン処方を検討しつつも、SNSなどで目にする「血栓症」という言葉に不安を感じていませんか?

結論からお伝えすると、医学的なガイドライン上、健康な女性へのピル(低用量ピル)の初回処方において、血液検査は「必須」ではありません。

しかし、これは「誰でも無条件で安全」という意味ではないのです。安全に服用を開始するためには、問診で正しくリスクを見極めることと、自分自身の体の状態(血圧や肝機能など)を把握しておくことが非常に重要です。

この記事では、地域医療の現場で多くの患者さんの健康相談に応じている医師監修のもと、以下の3点を詳しく解説します。

  • 血液検査なしでピルを始めてもよい具体的な「条件」と医学的な「理由」
  • 会社の健康診断結果を使って、手軽かつ確実に安全性を確認する方法
  • 心配な人が「どこで・どのように」検査を受けるべきかの具体的ルートと会話例

「検査なしは楽だけど不安」というジレンマを解消し、あなたが納得して安全にピルライフをスタートできるよう、医療のプロフェッショナルとして丁寧にサポートします。ぜひ最後までお読みください。

目次
  1. 結論:オンラインピル処方で血液検査は「必須」ではない
  2.  ただし要注意!血液検査や医師の診察が「絶対に必要な人」リスト
  3.  【ここが知りたい】検査なし派の不安を解消!「健康診断」活用術とセルフケア
  4.  もし検査を受けるなら?費用相場と「どこで受けるか」の正解ルート
  5. ピル服用中にチェックすべき具体的な検査項目と頻度
  6. 医師に聞く!オンラインピルと検査に関するQ&A
  7. 最後 まとめ:検査なしでも安全に始めるために、まずは「自分の体」を知ろう

結論:オンラインピル処方で血液検査は「必須」ではない

オンライン診療でピルを購入しようとすると、「血液検査不要」「即日発送」といった手軽さを強調する言葉が並んでいます。これを見て、「本当に検査しなくていいの?」「営利目的で安全性を軽視しているのでは?」と疑念を抱く方もいるかもしれません。

しかし、この「初回処方に血液検査は必須ではない」という方針は、決して手抜き診療ではなく、日本の産婦人科医療の指針となるガイドラインに基づいた正当な判断なのです。ここでは、その医学的根拠と、検査の代わりに何が安全を担保しているのかについて、詳しく解説していきます。

産婦人科ガイドラインにおける「初回処方」のルール

日本産科婦人科学会ガイドラインにおける低用量ピル初回処方時の検査推奨レベル(問診・血圧・血液検査の分類)

日本産科婦人科学会が発行している『低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン』は、日本の医師がピルを処方する際のバイブルとも言えるものです。

このガイドラインにおいて、ピルの服用を開始する前(初回処方時)に行うべき検査について、以下のように定義されています。

推奨レベルA(実施することが強く推奨される)

  • 問診
  • 血圧測定

推奨レベルB(実施することが推奨される)

  • 体重測定・BMI計算

推奨レベルC(実施を考慮する / 必須ではない)

  • 臨床検査(血液検査など)
  • 子宮頸がん検診、乳房検診、性感染症検査など

出典:日本産科婦人科学会編『低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(2015年度版・2020年度版)』より要約

このように、血液検査は「必須(レベルA)」ではなく、「実施を考慮する(レベルC)」という位置付けになっています。つまり、健康状態に問題がないと判断される女性であれば、血液検査を行わずに処方を開始することは、医学的に認められた標準的な対応なのです。

これはオンライン診療に限った話ではなく、街の婦人科クリニックを受診した場合でも同様です。実際、「初めてピルを飲みに行ったら、問診と血圧測定だけで処方された」という経験を持つ方は少なくありません。オンライン診療だから特別に検査を省略しているわけではない、という点をまずは理解しておきましょう。

なぜ検査なしでも処方できるのか?「問診」が最重要である理由

「でも、血を見ると何かがわかるんじゃないの?」と思うかもしれません。確かに血液検査は多くの情報を教えてくれますが、ピルの服用可否を判断する上で、血液検査以上に重要なのが「詳細な問診」です。

ピルの重大な副作用である「血栓症(静脈血栓塞栓症:VTE)」のリスク要因は、血液の数値そのものよりも、その人の「背景」に強く隠れているからです。

具体的には、以下の項目をチェックすることで、リスクの高い人を高い精度で見分ける(スクリーニングする)ことができます。

  • 年齢: 40歳以上ではないか?(35歳以上から注意が必要)
  • 喫煙歴: タバコを吸っているか? 1日何本か?
  • 肥満度: BMIが30以上ではないか?
  • 既往歴: 過去に血栓症や心臓病、脳卒中などを起こしていないか?
  • 家族歴: 両親や兄弟姉妹に、若くして血栓症になった人はいないか?
  • 片頭痛: 「前兆(目の前に光が見えるなど)」のある片頭痛持ちではないか?

これらの情報は、採血をしても分かりません。ご本人からの申告(問診)によってのみ明らかになる情報です。

オンライン診療では、対面で話す時間が短い場合でも、事前のWeb問診票でこれらの項目を網羅的に確認するシステムが構築されています。医師は、その回答内容を一つひとつ確認し、「この人は安全に飲めるか」「追加の検査が必要か」を慎重に判断しています。

つまり、「検査なし」=「ノーチェック」ではなく、「問診という強力なフィルターで厳重にチェックしている」状態なのです。

 オンライン診療でも対面でも、医学的な基準は同じ

オンライン診療と対面診療で、求められる医学的な安全性に差はありません。厚生労働省の『オンライン診療の適切な実施に関する指針』でも、対面診療と同等の質を担保することが求められています。

オンラインだからといって、リスクが見逃されて良いわけではありません。むしろ、直接顔色を見たり触診したりできない分、問診票の内容はより細かく設定されていることが多いです。

もし、Web問診で「喫煙あり」や「原因不明の片頭痛あり」などにチェックがついた場合、良心的なオンライン診療サービスであれば、「処方不可」の判定が出るか、医師から「まずは近くの病院で詳しく検査を受けてください」とメッセージが届くはずです。これは、システムが正しく機能し、あなたの安全を守ろうとしている証拠と言えます。

監修者のアドバイス

『血液検査がないと不安』という患者さんの声は、日々の診療現場でもよく耳にします。お気持ちはとてもよく分かります。 しかし、実はピルの処方可否において、最も優先順位が高いのは『詳細な問診』なのです。血栓症リスクの高い方、例えばヘビースモーカーの方や肥満傾向の方、特定の種類の片頭痛をお持ちの方などは、血液検査の数値を見る以前に、問診の段階でリスクを判別(スクリーニング)することが可能です。 したがって、初回からの血液検査は必ずしも必須ではありません。ただし、これには『患者さんが嘘偽りなく、正確に情報を申告すること』が大前提となります。 オンライン診療の場合、医師と直接顔を合わせないため、つい『吸っていない』『病気はない』と軽く回答してしまうケースがあるかもしれませんが、これは非常に危険です。自分の身を守るためにも、問診には正直に答えるようにしてくださいね。

 ただし要注意!血液検査や医師の診察が「絶対に必要な人」リスト

前項で「基本は検査不要」とお伝えしましたが、それはあくまで「健康な女性」の場合です。体質や生活習慣によっては、ピルの服用が命に関わるリスクになる(禁忌)、あるいは慎重な判断が必要な(慎重投与)ケースが存在します。

ここでは、あなたが「検査なしで処方を受けても良い人」なのか、それとも「必ず医師の診察や検査を受けるべき人」なのかを判断するためのチェックリストを提供します。オンライン診療を申し込む前に、必ずセルフチェックを行ってください。

 ピルを処方できない「禁忌」に該当するケース

低用量ピルを服用できない禁忌のケース:前兆のある片頭痛(閃輝暗点)、35歳以上の喫煙者、高血圧

以下に該当する方は、ピルを服用することで血栓症や脳卒中などの重大な副作用が起こるリスクが極めて高いため、原則としてピルを飲むことができません(絶対禁忌)。 オンライン診療でこれらを隠して処方を受けることは絶対に避けてください。

  • 前兆のある片頭痛がある方:
    • 頭痛が起きる前に、視界に「ギザギザした光」や「キラキラした点」が見えたり、視野の一部が見えなくなったりする(閃輝暗点:せんきあんてん)症状がある場合です。ピルに含まれるエストロゲンが脳卒中のリスクを高める可能性があります。
  • 35歳以上で、1日15本以上タバコを吸う方:
    • 年齢と喫煙は、それぞれ単独でも血栓症リスクを高めますが、掛け合わせるとリスクが跳ね上がります。
  • 現在、乳がん・子宮体がんの疑いがある、または治療中の方:
    • これらのがんはエストロゲンによって増殖するため、ピルが悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 原因不明の異常性器出血がある方:
    • 不正出血の原因ががんなどの重篤な病気である可能性を否定できないためです。
  • 過去に血栓症(静脈血栓症、肺塞栓症、脳梗塞、心筋梗塞など)を起こしたことがある方:
    • 再発のリスクが高いため禁忌です。
  • 重篤な肝機能障害がある方:
    • ピルは肝臓で代謝されるため、肝臓に負担をかけます。
  • 高血圧の方(収縮期血圧160mmHg以上、または拡張期血圧100mmHg以上):
    • 血管系への負担が大きいためです。

 慎重投与が必要なケース(医師の判断と検査が必要)

以下に該当する方は、ピルを飲めないわけではありませんが、リスクが高いため医師による慎重な判断と、定期的な血液検査などの管理が必要となります(慎重投与)。オンライン診療だけで完結させるのではなく、対面での診察や検査を併用することを強く推奨します。

  • 40歳以上の方:
    • 加齢とともに血栓症リスクが自然上昇するため。
    • ※最新のガイドライン(2020年度版)では、有益性がリスクを上回る場合は50歳または閉経まで処方可能とされていますが、慎重な管理が求められる点に変わりはありません。
  • 喫煙者(35歳未満、または1日15本未満):
    • 禁煙が強く推奨されますが、服用する場合は厳重な管理が必要です。
  • 肥満の方(BMI 30以上):
    • 肥満自体が血栓症のリスクファクターです。
  • 高血圧予備軍の方(軽度の高血圧):
    • 血圧コントロールが必要です。
  • 糖尿病の方:
    • 血管への影響を考慮する必要があります。
  • 家族に血栓症の既往がある方(家族歴):
    • 遺伝的に血栓ができやすい体質の可能性があります。

 血縁者に血栓症の既往がある場合は要注意

特に見落とされがちなのが「家族歴」です。
ご自身は健康でも、ご両親や兄弟姉妹が50歳未満で「血栓症(足の血管が詰まる、肺に血栓が飛ぶなど)」や「脳梗塞」「心筋梗塞」を発症している場合、遺伝的に血液が固まりやすい体質(血栓性素因)を持っている可能性があります。

この場合、血液検査で「プロテインC」「プロテインS」「アンチトロンビン」といった、特殊な凝固因子の数値を調べる必要があるかもしれません。これは一般的な健康診断では調べない項目ですので、必ず医師に相談してください。

ピル処方前のセルフチェックリスト

項目内容判定
頭痛「キラキラした光」が見える頭痛がある× 処方不可 (禁忌)
喫煙35歳以上で1日15本以上吸う× 処方不可 (禁忌)
血圧上160 / 下100 以上ある× 処方不可 (禁忌)
年齢40歳以上である△ 医師と要相談
体型BMIが30以上ある (肥満)△ 医師と要相談
家族家族が若くして血栓症になった△ 医師と要相談・検査推奨
健康直近1年以内の健診で異常なし○ オンライン処方可

▼ BMIの計算方法はこちら

BMI = 体重(kg) ÷ {身長(m) × 身長(m)}

例:身長160cm、体重60kgの場合
60 ÷ (1.6 × 1.6) = 23.4
→ 18.5〜25未満なら普通体重、25以上は肥満傾向、30以上は高度肥満(慎重投与)です。

監修者のアドバイス

私が特に注意喚起したいのは『前兆のある片頭痛』と『家族歴』です。 『頭痛持ち』の方は多いですが、その中に『目の前がチカチカする』『ギザギザした光が見えて、その後に激しい頭痛が来る』という症状がある場合は、ピルによって脳卒中のリスクが有意に上昇するため、絶対に飲んではいけません。これは小児科領域でも、思春期の女の子にピルを検討する際に必ず確認する重要事項です。 また、ご家族の病歴も非常に重要です。これらはオンラインの問診票で見過ごされやすい部分でもあります。『たかが頭痛』『昔、お父さんが足の手術をしたけど関係ないか』と思わずに、必ず医師に伝えてください。それがあなたの命を守ることになります。

 【ここが知りたい】検査なし派の不安を解消!「健康診断」活用術とセルフケア

「私は禁忌リストには当てはまらない。でも、全く検査せずに飲み始めるのはなんとなく不安…」
「かといって、わざわざ病院に行って採血だけしてもらうのも面倒だし、痛いのは嫌だ…」

そんなあなたにおすすめしたいのが、「会社の健康診断」や「学校・住民検診」の結果を活用する方法です。
実は、新たに採血をしなくても、手元にある健康診断の結果表を見るだけで、ピルを安全に始められるかどうかの大部分をチェックすることができるのです。

ここでは、健診結果の「どこ」を見れば良いのか、具体的な項目とチェックポイントを解説します。

 わざわざ採血しなくてもOK?会社の健康診断結果が役立つ理由

先ほど解説した通り、ガイドラインで推奨されている検査項目は、一般的な健康診断の項目と多くが重複しています。
ピルの処方にあたって確認したいのは、主に「肝臓が元気か」「脂質(コレステロール)が高すぎないか」「血圧が正常か」という点です。

これらは、年に1回の定期健康診断で必ず調べられる基本項目です。つまり、直近1年以内(できれば半年以内)の健康診断結果があり、その結果が「異常なし(A判定やB判定)」であれば、わざわざピルのために追加で採血をする必要性は低いと言えます。

オンライン診療を受ける際、手元に健康診断の結果表を用意しておきましょう。サービスのによっては、問診票に画像をアップロードできる場合もありますし、医師とのチャットや通話の際に「先月の健診で全てA判定でした」「コレステロールだけ少し高めでした」と具体的に伝えることで、医師もより安心して処方判断ができます。

 健診結果のどこを見る?ピル服用前にチェックすべき3つの数値

オンラインピル処方時に確認すべき健康診断結果の項目:血圧、肝機能(ASTALT)、脂質(LDLコレステロール)の基準値

お手元の健康診断結果表を広げて、以下の3つのポイントを確認してみてください。

1. 血圧 (Blood Pressure)

  • 見る場所: 身体計測などの欄にある「血圧」
  • チェック基準: 上が140未満、下が90未満であればまずは安心です。
  • 理由: ピルには血圧をわずかに上昇させる作用があります。もともと高血圧の人が飲むと、心血管系のリスクが高まります。上が160以上、下が100以上の場合は禁忌(服用不可)となります。

2. 肝機能 (Liver Function)

  • 見る場所: 血液検査の欄にある「AST(GOT)」「ALT(GPT)」「γ-GTP」
  • チェック基準: 基準値内(検査機関によりますが、目安としてAST/ALTともに30〜40以下)であること。
  • 理由: ピルは飲み薬なので、肝臓で分解・代謝されます。肝機能の数値が極端に高い場合、肝臓に負担がかかっている状態なので、ピルの服用が肝障害を悪化させる恐れがあります。

3. 脂質代謝 (Lipids)

  • 見る場所: 血液検査の欄にある「LDLコレステロール」「HDLコレステロール」「中性脂肪(TG)」
  • チェック基準: LDLコレステロールが健診基準内(概ね140mg/dL未満)であること。
  • 理由: 脂質異常症(高脂血症)は、血液をドロドロにし、血栓ができやすい土壌を作ります。特にLDL(悪玉)コレステロールが高い人は要注意です。もし基準値を超えている場合は、ピル開始前に医師へ相談しましょう。

 定期的な「血圧測定」だけでもリスク管理になる

もし健康診断の結果が手元になくても、今日からすぐにできる最強のリスク管理があります。それは「血圧測定」です。

ガイドラインでも、血液検査は「考慮する(レベルC)」ですが、血圧測定は「強く推奨(レベルA)」とされています。つまり、採血よりも血圧を測ることの方が、ピルの安全性確保においては優先度が高いのです。

自宅に血圧計があればベストですが、なければ職場の医務室や、市民センター、ドラッグストアの店頭などに設置されている血圧計を利用しても構いません。「ピルを飲み始める前」に一度測り、飲み始めてからも「1ヶ月に1回」程度測る習慣をつければ、体の異変に早期に気づくことができます。

監修者のアドバイス

「年に1回の会社の健康診断や住民検診の結果は、あなた自身の体を知るための貴重な医療データです。これを活用しない手はありません。 オンライン診療を受ける際、もし手元に直近の健診結果があれば、ぜひ医師にその旨を伝えてください。たとえ画像を送れなくても、『肝機能と血圧は正常範囲でした』と伝えるだけで、診察の精度は格段に上がります。 また、日常生活の中で『血圧』を測る習慣を持つことは非常に素晴らしいことです。高血圧は『サイレントキラー』と呼ばれ、自覚症状がほとんどありません。ピルを服用中は、美容室や銭湯に行ったついででも構いませんので、見かけたら測るようにしてみてください。上が140を超えるようなことが続けば、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。」

 もし検査を受けるなら?費用相場と「どこで受けるか」の正解ルート

「健診をしばらく受けていない」
「家族に血栓症の人がいるから、やっぱり一度詳しく調べたい」
「オンライン診療のサイトで『検査キット』を売っているけど、あれでいいの?」

そのような方のために、ピル服用に関する血液検査を受けるための具体的な3つのルートと、それぞれのメリット・デメリット、費用相場をまとめました。

 選択肢① 近所の内科・婦人科で受ける(最も確実)

最も確実で安心なのは、近くの内科または婦人科を受診して採血することです。
オンライン診療を利用している場合、実店舗の婦人科に行きづらい(叱られそう)と感じるかもしれませんが、内科であれば「ピルのために」と気負わずに受診できます。

  • どこへ行く?: 近所の内科、循環器内科、婦人科
  • 頼み方のコツ(会話例):
    「現在、生理痛の緩和(または避妊)のために低用量ピルの服用を検討しています(または服用中です)。オンラインでの処方を考えているのですが、安全のために定期的に肝機能や血液凝固の検査を受けておきたいと思い、受診しました。自費で構いませんので、検査をお願いできますか?」
  • メリット: 医師が直接血管の状態を見たり、聴診したりしてくれる。異常があった場合にすぐ治療に繋げられる。
  • デメリット: わざわざ出向く必要がある。待ち時間がある。

※ピルのための検査は、病気の治療ではないため原則「自費診療(保険適用外)」となります。ただし、「足が痛い」「息苦しい」などの症状がある場合は保険適用になる可能性があります。

 選択肢② オンライン診療の「自宅検査キット」を利用する

多くのオンラインピル処方サービスでは、オプションとして「血液検査キット」を販売しています。指先から少量の血を採取し、郵送して検査してもらうタイプです。

  • メリット: 自宅で完結する。誰にも会わずに済む。
  • デメリット: 自分で針を刺して血を絞り出す必要があり、慣れていないと失敗しやすい(血が足りないなど)。医療機関での採血に比べて精度が劣る場合がある。費用が割高になりがち。
  • おすすめな人: 病院に行く時間が全くない人、注射(静脈採血)が極端に苦手な人。

 選択肢③ 自治体の検診を活用する

お住まいの自治体が実施している「特定健診(メタボ健診)」や「若年者健診」を利用する方法です。対象年齢や時期が決まっていますが、無料〜数千円と非常に安価に受けられます。

  • メリット: 費用が安い。
  • デメリット: 実施時期が決まっている。「血液凝固検査」などの特殊な項目は含まれないことが多い(肝機能や脂質は分かる)。

 検査にかかる費用相場(保険適用と自費診療の違い)

ピルの定期検査として行う場合の費用目安です(クリニックにより異なります)。

検査ルート費用相場 (税込)特徴
内科・婦人科 (自費)5,000円 〜 10,000円診察料込み。項目をカスタマイズ可能。
自宅検査キット4,000円 〜 8,000円手軽だが、項目は限定的。
自治体の健診無料 〜 3,000円安いが、凝固系検査は含まれないことが多い。
内科・婦人科 (保険)2,000円 〜 4,000円※症状がある場合のみ。 医師が検査必要と認めた場合。

筆者の体験談:近所の内科で検査をお願いしてみました

私もオンラインでピルを購入していますが、1年に1回は近所の内科クリニックで血液検査を受けています。 最初は「他で薬を買っているのに、検査だけ頼むのは失礼かな?」とドキドキしました。 しかし、受付で「ピルを飲んでいるので、肝機能と血栓のリスクをチェックしたいんです」と伝えると、先生は嫌な顔ひとつせず、「大事なことだね。じゃあ基本的な項目と、Dダイマーも見ておこうか」とスムーズに対応してくれました。 結果的に、会社の健診では分からない細かい数値まで説明してもらえ、非常に安心できました。かかりつけの内科を作っておくことは、ピルユーザーにとって大きな安心材料になると実感しています。

ピル服用中にチェックすべき具体的な検査項目と頻度

もし医療機関でオーダーメイドの検査をお願いする場合、具体的に「いつ」「何を」調べれば良いのでしょうか。ここでは、ピルユーザーが知っておくべき検査スケジュールと専門的な項目について解説します。

 頻度の目安:服用開始前、3ヶ月後、その後は半年〜1年に1回

血液検査を受けるタイミングとして推奨されている一般的なスケジュールは以下の通りです。

服用開始前(任意):

  • 健康診断の結果があればそれで代用可能です。

服用開始3ヶ月後(推奨):

  • 血栓症のリスクは、飲み始めから3ヶ月以内(特に最初の1ヶ月)が最も高いというデータがあります。この時期に一度検査を行い、体に異常が出ていないか確認するのが理想的です。

その後は半年〜1年に1回:

  • 長期服用による肝機能への影響などをチェックするため、定期検診として行います。会社の健診時期に合わせると忘れにくいでしょう。

 必須項目解説:肝機能、脂質代謝、凝固系(Dダイマー等)

内科や婦人科で「ピルのための検査」を依頼する際、医師が見ているのは主に以下の項目です。

  • 血液凝固検査(Dダイマー、FDPなど):
    • 最も重要です。 体の中で血栓(血の塊)が作られて分解されているかを示すマーカーです。Dダイマーの数値が高いと、どこかに血栓ができている可能性があります。
  • 肝機能検査(AST, ALT, γ-GTP):
    • 薬の代謝による肝臓への負担をチェックします。
  • 脂質代謝検査(コレステロール、中性脂肪):
    • ピルは中性脂肪を上げやすい傾向があるため、推移を見守ります。
  • 貧血検査(Hb, Ht):
    • ピルで生理の出血量が減るため、貧血が改善されているかどうかの確認にもなります。

 婦人科検診(子宮頸がん検査)も忘れずに

低用量ピル服用開始後の定期検査スケジュールと血栓症リスクの警戒期間

血液検査ばかりに目が行きがちですが、ピルユーザーなら忘れてはいけないのが「子宮頸がん検診」です。
ピルは避妊効果が高い反面、コンドームの使用頻度が減ることで、性感染症(HPV含む)のリスクが上がる側面があります。また、ピルの長期服用により子宮頸がんのリスクがわずかに上昇するという報告もあります。

「ピルを飲んでいるから婦人科系の病気は大丈夫」と過信せず、1年に1回は子宮頸がん検診を受けましょう。これは自治体のクーポンを使えば無料〜安価に受けられます。

ピル服用開始後の検査スケジュール

  • Start!
    • 問診・血圧測定(必須)
    • 健診結果確認(推奨)
  • 1ヶ月目〜3ヶ月目 【リスク警戒期間】
    • 足の痛み、頭痛などの症状に注意
    • 心配ならこの時期に採血(Dダイマー等)
  • 6ヶ月目
    • 血圧測定
  • 1年目(以降、年1回)
    • 健康診断(血液検査・血圧)
    • 子宮頸がん検診

監修者のアドバイス

「スケジュールや数値も大切ですが、もっと大切なのは『自分の体の声を聞くこと』です。 定期検査はあくまで『その時点での点検』に過ぎません。昨日検査が正常でも、今日血栓ができる可能性はゼロではないのです。 ですから、『ふくらはぎを押すと痛い・赤く腫れている』『突然の激しい頭痛』『鋭い胸の痛み』『息苦しさ』。これらの症状(ACHESと呼ばれる血栓症のサイン)が出た時は、次の検査を待たずに、すぐに受診してください。 『検査しているから大丈夫』と油断するのではなく、日々の変化に敏感になることこそが、最大の予防策です。」

医師に聞く!オンラインピルと検査に関するQ&A

ここでは、オンライン診療を検討している方からよく寄せられる疑問について、一問一答形式で解説します。

 Q. 血液検査の結果が悪かったらピルは飲めない?

A. 項目と程度によります。
例えば、コレステロールが基準値より少し高い程度であれば、食生活の改善指導と並行して処方されることが多いです。しかし、Dダイマー(血栓のマーカー)が基準値を大きく超えている場合や、重度の肝障害がある場合は、安全のために処方を見送ることがあります。
検査結果が悪かった場合でも、自己判断で諦めたり、逆に無視して服用したりせず、必ず医師に「この数値でも飲んで大丈夫か?」と相談してください。

 Q. 未成年(中高生)でも検査なしでオンライン処方は可能?

A. 可能です。
中高生であっても、ガイドライン上の扱いは成人と同じで、初回検査は必須ではありません。ただし、未成年の場合は体が成長段階にあるため、骨の成長への影響などを考慮してより慎重な問診が行われます。

また、多くのオンライン診療サービスでは、未成年の利用には「保護者の同意」や「同伴」を必須としています。(例:スマルナでは18歳未満は保護者との診察が必要、メデリピルでは保護者の同意確認が必要など、サービスごとに規定があります。)
月経困難症(ひどい生理痛)で悩んでいる場合は、まずは親御さんに相談し、可能であれば一度近くの小児科や婦人科を受診することをお勧めします。

 Q. 喫煙者でも血液検査をすればピルを飲める?

A. 35歳以上で1日15本以上吸う方は、検査をしても飲めません。
喫煙による血管へのダメージは、血液検査で数値が正常範囲であっても蓄積されています。「検査で問題なかったからタバコを吸いながらピルを飲んでもいい」という免罪符にはなりません。
血栓症のリスクは、喫煙とピルの組み合わせで相乗的に跳ね上がります。ピルを服用したいのであれば、これを機に禁煙することが絶対条件です。

監修者の回答

『タバコをやめられないけど、ピルも飲みたい』という相談はよくあります。しかし、医師としてこれは明確にお断りしなければなりません。 35歳以上で喫煙(1日15本以上)される方へのピル処方は、ガイドラインで明確な『禁忌(やってはいけない)』です。これは意地悪で言っているのではなく、脳梗塞や心筋梗塞で命を落とす、あるいは重い後遺症が残るリスクがあまりにも高いからです。 血液検査の結果に関わらず、このリスクは消えません。ピルをご希望であれば、まずは禁煙外来などで禁煙に取り組んでみましょう。それがあなたの健康と美容にとっても一番の近道です。

 Q. 血栓症が怖いので、予防のためにできることは?

A. 「水分摂取」と「運動」が基本です。
血栓は、血液がドロドロになり、流れが滞ることで発生します。

  • 水分補給: こまめに水を飲みましょう。特に夏場や運動中、サウナの前後などは意識的に摂取してください。
  • 同じ姿勢を続けない: デスクワーク中や長距離移動中は、1時間に1回は足首を回したり、トイレに立ったりして血流を促しましょう(エコノミークラス症候群の予防と同じです)。
  • 着圧ソックス: むくみが気になる場合は、医療用の着圧ソックスを使用するのも効果的です。

最後 まとめ:検査なしでも安全に始めるために、まずは「自分の体」を知ろう

オンラインピルは、忙しい現代女性にとって非常に便利な選択肢です。「血液検査なし」であること自体は、ガイドラインに基づいた適正な運用であり、過度に恐れる必要はありません。

しかし、その「便利さ」と「安全性」を両立させるためには、あなた自身の「正しく知って、正しく行動する」姿勢が不可欠です。

最後に、安全にオンラインピルを始めるためのポイントをまとめました。

オンラインピル処方前の最終確認チェックリスト

  • 問診の準備: 喫煙歴、片頭痛の種類、家族の病歴(特に血栓症)を正確に把握しましたか?
  • 健診結果の確認: 直近1年以内の健康診断の結果表はありますか?(血圧、肝機能、脂質)
  • リスクの認識: 自分が「禁忌」や「慎重投与」に当てはまらないか確認しましたか?
  • 緊急時の備え: もし足の痛みや激しい頭痛が起きたら、どこの病院に行くか考えてありますか?
  • 定期ケアの予定: 年に1回は健康診断や婦人科検診を受ける予定を立てていますか?

検査がないからこそ、「自分の体は自分で守る(セルフメディケーション)」という意識を持つことが大切です。
まずは手元の健康診断結果を探すところから始めてみてください。そして、少しでも不安な症状や不明点があれば、オンライン診療の医師や、地域のかかりつけ医に遠慮なく相談しましょう。

あなたのピルライフが、不安のない、快適で健康的なものになることを心から願っています。


参考文献

この記事の監修者

  • 平成16年
    愛知医科大学医学部卒業、愛知医科大学病院 卒後臨床研修医
  • 平成18年
    愛知医科大学病院 小児科入局
  • 平成23年
    愛知医科大学小児科 助教
  • 平成25年
    医療法人和幸会 阪奈中央病院勤務(小児科)
  • 平成29年
    たけつな小児科クリニック開院
  • 日本小児科学会(専門医/指導医)
  • 日本外来小児科学会
  • 日本小児科医会(地域総合小児医療認定医)
  • 日本小児神経学会
  • 日本頭痛学会

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