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なぜ「鉄分も一緒に」は危険?鉄過剰症のリスクと副作用を徹底解説

「『なぜ鉄分も一緒には危険?』の大見出しと注意マーク、吐き気で口を押さえる女性イラストを配した警告デザイン」

葉酸サプリメントを摂取していて、「鉄分も一緒に摂った方が良いのかな?」と思ったことはありませんか?あるいは、鉄分補給を始めたら、なんだか吐き気や胃の不調を感じるようになった、という方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、鉄分の過剰摂取が招くリスク、特に吐き気などの副作用と、葉酸サプリとの関係性、そしてどうすれば安全かつ効果的に鉄分を摂取できるのかについて、公的機関の情報を基に、私の経験も交えながら分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、あなたも鉄分摂取の賢い方法がきっと見つかるはずです。

鉄分過剰症とは?知っておくべき基本知識とリスク

まず、鉄分を過剰に摂取することによるリスクについて理解を深めましょう。一般的に鉄分不足が問題視されることが多いですが、摂りすぎもまた健康に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

鉄分過剰症のメカニズムと原因

鉄分は体内で酸素を運搬するヘモグロビンの重要な成分であり、私たちの生命活動に不可欠です。しかし、体内に過剰な鉄分が蓄積されると、細胞や組織にダメージを与えることがあります。

鉄分過剰症を引き起こす主な原因は以下の通りです。

  • サプリメントの過剰摂取: 特に鉄剤や鉄分強化サプリメントを推奨量以上に、あるいは長期間摂取し続けることで起こり得ます。誤った用法・用量での摂取が原因となることが多いです。
  • 遺伝的要因: ヘモクロマトーシスなどの遺伝性の疾患により、鉄分の吸収・代謝が異常になり、体内に過剰な鉄分が蓄積されることがあります。
  • 特定の疾患による鉄代謝異常: 肝臓病や特定の癌など、病気によって鉄分の代謝がうまくいかなくなり、過剰になるケースもあります。
  • 頻繁な輸血: 輸血を頻繁に受ける場合、外部から鉄分が供給され続けるため、過剰になることがあります。

私の経験上、サプリメントによる鉄分過剰は比較的起こりやすい傾向にあります。特に「〇〇も一緒に摂ると良い」といった情報に飛びつき、自己判断で摂取量を増やしてしまうケースが見受けられます。

「鉄分も一緒に」で吐き気が起こる可能性:葉酸との関係

「葉酸サプリと一緒に鉄分を摂ると良い」という情報は多く見られますが、この組み合わせで吐き気を感じる方がいるのも事実です。これは、鉄分自体の特性や、葉酸との関係性が関係している可能性があります。

鉄分サプリメントに含まれる鉄の種類(例:硫酸第一鉄など)によって、消化器系への負担が異なります。特に硫酸第一鉄は、人によっては吐き気や胃痛などを引き起こしやすいと言われています。また、同じ量の鉄分を摂取しても、体質によって副作用の出やすさが異なります。鉄分の吸収率が高い方や、胃腸がデリケートな方は、少量でも不調を感じることがあります。

以下に、サプリメントに含まれる鉄分の種類と、それらが引き起こしうる副作用の可能性について、一般的な傾向をまとめました。

【鉄分サプリメントに含まれる鉄の種類と副作用の可能性】

サプリメントに含まれる鉄の種類特徴・吸収率吐き気などの消化器系副作用の可能性
硫酸第一鉄吸収率は比較的高いが、胃腸への刺激が強い場合がある高い
フマル酸第一鉄硫酸第一鉄よりは刺激が穏やかだが、個人差あり中程度
クエン酸第一鉄ナトリウム消化器への負担が少ないとされる低い
ピロリン酸第二鉄吸収率はやや劣るが、副作用が少ないとされる低い

(※注:上記は一般的な傾向であり、個人差があります。必ず製品表示をご確認ください。)

鉄分過剰摂取で現れる具体的な症状

鉄分過剰症の症状は、蓄積された鉄分の量や期間、そして個人の健康状態によって様々です。初期段階では気づきにくいこともありますが、重症化すると様々な不調を引き起こします。

以下に、鉄分過剰症で現れる可能性のある主な症状をリストアップしました。ご自身の体調と照らし合わせて、気になる点がないか確認してみましょう。

【鉄分過剰症の主な症状チェックリスト】

消化器症状:

吐き気・嘔吐

腹痛、胃の不快感

下痢または便秘

全身症状:

強い倦怠感、疲労感

頭痛

関節の痛み

皮膚の変色(青白くなる、灰色がかるなど)

臓器への影響(重症の場合):

肝臓機能の低下(黄疸など)

心臓への負担(動悸、不整脈)

膵臓への影響(糖尿病のリスク)

これらの症状は、鉄分不足による貧血の症状とも似ているため、自己判断は禁物です。症状が続く場合は、必ず医療機関を受診し、正確な診断を受けるようにしましょう。

あなたの鉄分摂取量は大丈夫?適切な摂取量の目安と管理方法

「鉄分は足りているか心配だけど、摂りすぎは怖い…」と感じる方もいらっしゃるでしょう。ここでは、自分に必要な鉄分量を知り、適切に管理するための方法を解説します。

「日本人の食事摂取基準」から見る鉄分の必要量

まず、私たちに必要な鉄分の量について、公的な基準を確認しましょう。厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」では、年齢や性別によって推奨される鉄分の摂取量が定められています。

【年代別・性別ごとの鉄分の摂取基準と耐容上限量】

年齢区分男性 (mg/日)女性 (mg/日)妊婦 (付加量 mg/日)授乳婦 (付加量 mg/日)耐容上限量 (mg/日)
18~29歳7.56.5+2.5+1.540
30~49歳7.06.0+2.5+1.540
50~69歳7.05.540
70歳以上7.05.040

(※出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2020年版)より抜粋・一部簡略化)

特に女性は、月経によって毎月鉄分を失うため、男性よりも多くの鉄分摂取が推奨されています。しかし、この「必要量」を超えて過剰に摂取することは、リスクが伴います。サプリメントで補う際は、耐容上限量(健康障害のリスクがないとみなされる量)を超えないように注意することが重要です。私の経験上、「鉄分は摂れば摂るほど体に良い」と誤解し、自己判断で摂取量を増やしてしまう方がいらっしゃいました。しかし、体内の鉄分は適切な範囲でコントロールされており、上限を超えると逆に悪影響が出る可能性があることを理解しておく必要があります。

サプリメントの選び方と注意点:過剰摂取を防ぐために

鉄分サプリメントを選ぶ際は、含有量と種類に注意が必要です。

  • 含有量: 製品のパッケージに記載されている鉄分の含有量を確認し、食事からの摂取量も考慮した上で、1日の合計摂取量が耐容上限量を超えないようにしましょう。
  • 鉄の種類: 消化器系への負担を考慮するなら、クエン酸第一鉄ナトリウムやピロリン酸第二鉄など、比較的穏やかなものを選ぶのがおすすめです。
  • その他の成分: 鉄分の吸収を助けるビタミンCや、胃腸への負担を軽減する成分が含まれているかもチェックポイントです。

【サプリメントを選ぶ際のチェックリスト】

  • ☑ 目標摂取量(食事+サプリメント)が耐容上限量(40mg/日)を超えていないか?
  • ☑ 吐き気などの副作用が気になる場合、鉄の種類は穏やかなものか?(クエン酸第一鉄ナトリウム、ピロリン酸第二鉄など)
  • ☑ 鉄分の吸収を助けるビタミンCなどが配合されているか?
  • ☑ 必要に応じて医師や薬剤師に相談できるか?

鉄分過剰症のリスクを管理するための実践的な方法

サプリメントの適切な利用に加え、日頃からの管理も重要です。

  • 摂取タイミングと量の厳守: 製品に記載されている用法・用量を必ず守りましょう。空腹時の鉄分摂取は吸収率が高い反面、胃腸への刺激が強くなることがあります。食事中や食後すぐに摂る方が、副作用を軽減できる場合があります。
  • 体調の変化に注意: 鉄分補給を始めてから吐き気や胃の不快感が生じた場合は、摂取量を減らすか一時的に中止し、可能であれば別の種類の鉄分サプリメントを試してみましょう。それでも改善しない場合は、必ず医師に相談してください。
  • 定期的な健康診断: 体内の鉄分量は、血液検査(特にフェリチン値:貯蔵鉄の状態を示す指標)で確認できます。貧血や鉄分過剰が心配な場合は、定期的な健康診断を受け、医師の指示に従うことが最も確実な管理方法です。

鉄分補給は、ご自身の体調と相談しながら、無理なく続けることが大切です。

知っておきたい!安全で効果的な鉄分補給のヒント

鉄分を効果的に摂取するためには、食事とのバランスや、他の栄養素との組み合わせも考慮することが重要です。ここでは、さらに賢く鉄分を摂るためのヒントをご紹介します。

鉄分の吸収を高める栄養素と阻害する栄養素

鉄分は、一緒に摂取する食べ物や飲み物によって、吸収率が大きく変動します。

  • 吸収を高める栄養素:
    • ビタミンC: 非ヘム鉄(植物性食品に含まれる鉄)の吸収率を劇的に高めます。例えば、ほうれん草のおひたしにレモン汁をかける、鉄分補給を意識した食事に果物を添えるなどが効果的です。
    • ビタミンA・β-カロテン: 鉄分の吸収を助け、体内に蓄積するのを促進します。緑黄色野菜に多く含まれます。
    • タンパク質: ヘム鉄(動物性食品に含まれる鉄)の吸収を助けるほか、鉄分を体内に運ぶタンパク質(フェロポートリンなど)の生成にも関わります。
  • 吸収を阻害する栄養素:
    • タンニン: 緑茶や紅茶、コーヒーなどに含まれる成分です。食事中や食後すぐにこれらの飲み物を摂ると、鉄分の吸収を妨げます。鉄分を意識的に摂取したい時期は、飲む時間をずらすのがおすすめです。
    • フィチン酸: 玄米、全粒粉パン、豆類などに含まれる成分で、鉄分と結合して吸収を阻害します。発酵(味噌、醤油など)や浸水、加熱によって減らすことができます。
    • カルシウム: 乳製品などに含まれるカルシウムも、鉄分の吸収をある程度妨げると言われています。

【鉄分の吸収を助ける・阻害する食品とその栄養素】

鉄分の吸収を助ける食品・栄養素鉄分の吸収を阻害する食品・栄養素補足説明・摂取のポイント
ビタミンC (果物、野菜)タンニン (緑茶、紅茶、コーヒー)食事中や食後に摂取すると、鉄分の吸収を妨げます。飲む時間をずらしましょう。
ビタミンA・β-カロテン (緑黄色野菜)フィチン酸 (玄米、豆類)発酵や加熱で低減されます。
タンパク質 (肉、魚)カルシウム (乳製品)

鉄分を豊富に含む食品ガイド:バランスの取れた食事

サプリメントに頼りすぎず、まずは食事からしっかり鉄分を摂ることが基本です。

  • ヘム鉄: 動物性食品に多く含まれ、非ヘム鉄よりも体内への吸収率が高いのが特徴です。
    • 多く含む食品: 赤身の肉(牛肉、豚肉)、レバー(鶏・豚・牛)、魚介類(カツオ、マグロ、イワシなど)、卵黄。
  • 非ヘム鉄: 植物性食品や、乳製品、卵などに含まれます。吸収率はヘム鉄に劣りますが、ビタミンCなどと組み合わせることで吸収率を高めることができます。
    • 多く含む食品: 緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜、ブロッコリー)、大豆製品(豆腐、納豆)、ドライフルーツ(プルーン、レーズン)、海藻類(ひじき、のり)。

鉄分不足を感じている方は、まずはバランスの取れた食事を意識しましょう。例えば、朝食にレバーペーストを塗ったパン、昼食に赤身肉のステーキ、夕食にほうれん草のおひたしとひじきの煮物を摂ると、自然と鉄分摂取量を増やせます。

葉酸サプリの正しい付き合い方:鉄分との賢い併用術

葉酸は、赤血球を正常に作る働きを助ける栄養素であり、鉄分不足による貧血だけでなく、葉酸不足による巨赤芽球性貧血の予防にも不可欠です。

  • 葉酸の本来の役割: DNAやRNAの合成、細胞の分裂や成長に深く関わっており、特に細胞分裂が活発な妊娠初期の胎児の正常な発育に非常に重要です。
  • 鉄分サプリとの併用: 葉酸サプリを摂取している方が鉄分補給を目的とする場合、過剰摂取にならないよう注意が必要です。
    • 副作用が出た場合: もし葉酸サプリと鉄分を一緒に摂った際に吐き気を感じる場合は、摂取量を減らす、鉄分の種類を変更する(例:硫酸第一鉄からピロリン酸第二鉄へ)、あるいは摂取タイミングを調整するなどの対応を検討しましょう。
    • 葉酸の過剰摂取リスク: 過剰な葉酸摂取は、ビタミンB12欠乏症の症状(神経障害など)を隠してしまう可能性があります。これは、本来葉酸が補うべき症状を覆い隠してしまうため、注意が必要です。

【葉酸と鉄分の適切な摂取タイミングや注意点】

  1. 個別の摂取: 吐き気や胃の不快感がある場合は、葉酸サプリと鉄分サプリを別々に摂取することを検討しましょう。
  2. タイミングの調整: 鉄分サプリは、食後すぐに摂ることで胃腸への負担を軽減できることがあります。葉酸サプリは、空腹時でも摂取可能ですが、食事と一緒に摂ることで吸収が安定することもあります。ご自身の体調に合わせて調整しましょう。
  3. 鉄分の種類を見直す: 副作用が気になる場合は、クエン酸第一鉄ナトリウムやピロリン酸第二鉄など、より穏やかな鉄分の種類を含むサプリメントへの変更を検討しましょう。
  4. 医師・専門家への相談: どのサプリメントを選ぶべきか、適切な摂取量やタイミングについて迷った場合は、医師や管理栄養士などの専門家に相談することが最も確実です。特に妊娠中の方や持病のある方は、必ず事前に相談してください。
  5. 葉酸サプリの成分確認: 現在服用中の葉酸サプリに鉄分が多く含まれていないか確認し、必要であれば鉄分無配合のものに変更することも検討しましょう。

【参考リンク】葉酸サプリメントの正しい選び方と効果的な飲み方:目的別おすすめランキング

まとめ:あなたの健康のために、賢く鉄分をチャージしよう

ここまで、「鉄分も一緒に」という考え方の落とし穴、鉄分過剰摂取のリスク、そして葉酸サプリとの関係性、さらには安全で効果的な鉄分補給の方法について詳しく見てきました。

大切なのは、「鉄分は必要だけれど、摂りすぎは厳禁」というバランス感覚を持つことです。ご自身の体の声に耳を傾け、適切な摂取量を守り、必要に応じて専門家の意見も参考にしながら、あなたに合った方法で鉄分を補給していきましょう。

もし、鉄分摂取に関してご心配な点や、今回の記事で疑問が解消されなかった場合は、遠慮なく医師や専門家にご相談ください。

参考文献・参照元URL

この記事は以下の公共機関が提供する医学情報およびガイドラインを参照しています。

監修者
院長

たけつな  のぶひと

竹綱 庸仁

経歴

平成16年愛知医科大学医学部卒業

愛知医科大学院病院 卒後臨床研修医

平成18年愛知医科大学病院 小児科入局

平成23年愛知医科大学小児科 助教

平成29年たけつな小児科クリニック開院

所属
学会

日本小児科学会(専門医/指導医)

日本外来小児科学会

日本小児科医会(地域総合小児医療認定医)

日本小児神経学会

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