【年表付】葉酸の推奨量はどう変わった?厚生労働省の指針改定の歴史と理由を解説

「葉酸サプリを飲もうと思うけど、情報がたくさんあって、結局どれだけ摂ればいいのか分からない」「昔と今で、推奨される量が変わったって本当?」――。
未来の赤ちゃんのために、そしてご自身の健康のために、葉酸の重要性に気づいたあなただからこそ、そんな疑問や不安を感じているのではないでしょうか。
ご安心ください。この記事では、厚生労働省が公表している信頼性の高い情報に基づき、葉酸の推奨量が時代と共に「なぜ」「どのように」変わってきたのかを、その科学的・社会的背景と共に徹底的に解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたは以下の点を明確に理解できます。
- 最新の、そして正しい葉酸の推奨摂取量
- 推奨量が改定されてきた歴史的な背景と科学的根拠
- ご自身の状況に合わせて、自信を持って葉酸を選ぶための知識
複雑な情報を整理し、あなたの不安を「安心」と「確信」に変える一助となることを目指します。さあ、一緒に見ていきましょう。
【結論】最新版|厚生労働省が推奨する妊娠時期別の葉酸摂取量
結論からお伝えします。現在、厚生労働省が「日本人の食事摂取-基準(2020年版)」で示している、女性のライフステージごとの葉酸推奨量は以下の表の通りです。特に重要なのは、通常の食事に加えて、サプリメントなどから特定の量の葉酸を「付加して」摂取することが推奨されている点です。
妊娠ステージごとの葉酸推奨摂取量(1日あたり)
ライフステージ | 食事からの推奨量 | サプリメント等からの付加推奨量 | 合計の目安 |
---|---|---|---|
妊娠を計画している女性 | 240μg | 400μg | 640μg |
妊娠初期(〜12週頃) | 240μg | 400μg | 640μg |
妊娠中期・後期 | 240μg | 240μg | 480μg |
授乳中 | 240μg | 100μg | 340μg |
成人女性(通常時) | 240μg | 0μg | 240μg |
表の通り、最も多くの葉酸が必要なのは、妊娠を計画している時期から妊娠初期にかけてです。この時期に、通常の食事にプラスして、サプリメント等を活用して400μgの葉酸を摂取することが、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを低減するために極めて重要だとされています。
【全史】葉酸サプリ推奨量の変遷が一目でわかる年表
では、現在のこの推奨量に至るまで、どのような歴史があったのでしょうか。厚生労働省の指針は、最新の科学的知見を反映して、これまで何度も改定されてきました。その変遷を、背景と共に時系列で見ていきましょう。
2000年
出来事: 厚生省(当時)が「神経管閉鎖障害のリスク低減のために、妊娠可能な年齢の女性への情報提供」を通知。
推奨内容: 「1日400μgの葉酸摂取」が望まれる、という形で初めて具体的な数値が示される。
背景: 欧米での大規模研究により、葉酸の有効性が確立されたことを受けた動き。
2005年
出来事: 「日本人の食事摂取基準(2005年版)」策定。
推奨内容: 日本人独自の基準として、妊婦と授乳婦の付加量が設定される。この時、ほとんどの人(97〜98%)が必要量を満たすとされる「推奨量(RDA)」と、集団の半数が必要量を満たす「推定平均必要量(EAR)」という二つの指標が用いられ、妊婦には推奨量で+240µg、授乳婦には+100µgが示された。
背景: 日本人のデータに基づいた基準策定が本格化し、より詳細な指標が導入された。
2010年
出来事: 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」策定。
推奨内容: 妊娠を計画している女性・妊娠初期の女性に対し、食事からの240μgに加え「サプリメント等から400μg」の付加を推奨する形に。これが現行の考え方の基礎となる。
背景: サプリメント等に含まれる葉酸(モノグルタミン酸型)の利用効率が高いことが明確になり、食事由来の葉酸と区別して考える重要性が浸透した、画期的な改定。
2015年
出来事: 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定。
推奨内容: 妊活期〜妊娠初期の「+400μg」は維持しつつ、妊娠中期・後期の付加量を+240μgに、授乳婦の付加量を+100μgにそれぞれ更新。
背景: 妊娠全期間を通した母体の健康維持や、授乳期の必要性に関する研究が進んだため。
2020年
出来事: 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定(現行)。
推奨内容: 2015年版の内容を維持。サプリメントからの摂取の重要性を改めて強調。
背景: これまでの基準が妥当であること、またその重要性が再確認される。
【なぜ推奨量は変わった?厚労省ガイドライン改定、3つの舞台裏
年表で歴史を俯瞰すると、推奨量が科学の進歩と共に、より緻密に、より実践的に改定されてきたことがわかります。その背景には、大きく分けて3つの理由があります。この「理由」を理解することが、情報に振り回されず、自信を持って行動するための鍵となります。
理由1:神経管閉鎖障害のリスク低減効果に関する科学的根拠の蓄積
すべての始まりは、葉酸が赤ちゃんの先天異常である「神経管閉鎖障害」のリスクを大幅に減らす、という科学的発見でした。1990年代に海外で行われた大規模な臨床試験でその効果が劇的に示され、世界保健機関(WHO)も推奨するに至りました。この国際的な科学的コンセンサスの高まりが、2000年に日本の厚生省(当時)が初めて具体的な数値を示すという、歴史的な一歩に繋がったのです。
理由2:「食事から」と「サプリから」の葉酸、体内での働きの違いが明確化
次に大きな転換点となったのが、「食事に含まれる葉酸」と「サプリメントに含まれる葉酸」では、体内での利用効率が全く違うという事実が明確になったことです。
専門用語では、食事由来のものを「ポリグルタミン酸型葉酸」、サプリメント等に使われる合成のものを「モノグルタミン酸型葉酸」と呼びます。両者の最も大きな違いは、体内への吸収率です。以下の表でその違いをご確認ください。
項目 | 食事性葉酸(ポリグルタミン酸型) | サプリの葉酸(モノグルタミン酸型) |
---|---|---|
主な含有源 | ほうれん草、ブロッコリー、豆類など | 葉酸サプリメント、栄養機能食品 |
特徴 | 複数の分子が結合した複雑な構造 | 単一の分子でシンプルな構造 |
体内での吸収率 | 約50% | 約85% |
安定性 | 水や熱に弱く、調理で失われやすい | 安定している |
このように、サプリメントの葉酸は食事から摂る葉酸に比べて、約1.7倍も効率よく体に吸収されます。この科学的知見が確立されたことで、「食事摂取基準」においても、食事から摂るべき量とは別に、サプリメント等で「付加すべき量」が明確に定義されるようになったのです。これが、2010年版以降の大きな変化の背景です。
理由3:日本人の食生活の変化と健康課題への対応
最後に、日本人の食生活や健康状態の変化も、基準改定に影響を与えています。例えば、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では、長年にわたり若い女性の「やせ」の傾向や、それに伴うエネルギー・栄養素の摂取不足が指摘されています。
つまり、通常の食事だけでは、推奨される栄養量を満たすことが難しい人が増えているという社会的背景があります。こうした状況を踏まえ、食事摂取基準では、不足しがちな栄養素をサプリメント等で補うことの重要性が、より一層強調されるようになっているのです。
葉酸摂取の基礎知識|これだけは押さえたい3つのポイント
推奨量の歴史と背景を理解したところで、改めて葉酸摂取の基本的なポイントを3つに絞って確認しましょう。
ポイント1:そもそも葉酸とは?赤ちゃんとお母さんへの役割
葉酸は、ビタミンB群に属する水溶性のビタミンです。その最も重要な働きは、細胞が新しく作られるのを助けることです。赤血球の生産を助けるため「造血のビタミン」とも呼ばれますが、妊娠初期には特に、赤ちゃんの脳や脊髄といった中枢神経系が作られる、極めて重要な時期の細胞分裂をサポートします。このため、葉酸は新しい命を育む上で欠かせない栄養素なのです。
ポイント2:なぜ食事だけではダメ?サプリメントが推奨される理由
「野菜をたくさん食べれば十分では?」と思う方もいるかもしれません。しかし、厚生労働省がサプリメントの活用を強く推奨するには、明確な理由があります。それは、先ほど解説した「吸収率の違い」と「調理による損失」です。食事に含まれる葉酸は、吸収率が約50%と低い上に、水や熱に非常に弱く、調理過程でその多くが失われてしまいます。必要な量を食事だけで安定的に確保するのは、現実的に非常に困難なのです。だからこそ、吸収率が高く、安定した量を確実に摂取できるサプリメントの活用が推奨されています。
ポイント3:いつからいつまで摂るべき?葉酸摂取の最適なタイミング
葉酸が特に必要となるのは、妊娠の1ヶ月以上前から、妊娠3ヶ月までの期間です。赤ちゃんの脳や脊髄の元となる神経管は、妊娠6週末ごろにはほぼ作られてしまいます。つまり、多くの人が妊娠に気づく頃には、この最も重要な時期は過ぎてしまっている可能性があるのです。だからこそ、妊娠を計画している段階からの摂取が推奨されます。
もちろん、妊娠中期以降や授乳中でも、母体の貧血予防や、赤ちゃんの成長、母乳の生成のために葉酸は必要です。計画段階から出産後まで、継続して摂取することが理想的と言えるでしょう。
葉酸サプリに関するQ&A|よくある疑問を解消
最後に、葉酸サプリメントに関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。
Q1. 葉酸を摂りすぎると副作用はある?耐容上限量は?
はい、サプリメントなど食事以外の形で摂取する葉酸には、1日の摂取上限量(耐容上限量)が定められています。食事に含まれる葉酸は吸収が穏やかなため、過剰摂取のリスクは低いと考えられており、上限は設定されていません。
サプリメントからの葉酸の耐容上限量は、年齢によって異なり、具体的には以下の通りです。
- 18歳 〜 29歳: 900μg/日
- 30歳 〜 64歳: 1,000μg/日
- 65歳以上: 900μg/日
市販のサプリメントの用法・用量を守っていれば、上限を超えることはほとんどありませんが、複数のサプリを併用する際は合計量に注意しましょう。
Q2. 葉酸サプリはいつ飲むのが効果的?
葉酸サプリは医薬品ではないため、飲む時間に厳密な決まりはありません。しかし、飲み忘れを防ぎ、習慣化するためには、毎日同じ時間に飲むのがおすすめです。胃腸が弱い方は、空腹時を避けて食後に飲むと負担が少ないでしょう。
Q3. パートナー(男性)も葉酸を摂るべき?
男性の体にとっても、葉酸が重要な栄養素であることは間違いありません。通常の健康維持のために、成人男性は1日に240μgの葉酸を食事から摂ることが推奨されています。
妊活との関連については、葉酸が精子の質に良い影響を与える可能性があるという説から研究が進められています。しかし、現時点では専門家の間でも見解が一致しておらず、明確な科学的結論は出ていません。一部の研究では肯定的な結果が報告されていますが、一方で、より大規模な研究では明確な効果が確認されなかったという報告も存在します。そのため、今後のさらなる研究成果が待たれる分野と言えるでしょう。
まずは、パートナーと共にバランスの取れた食生活を心がけ、日々の健康維持の基本として、推奨量を満たすことが大切です。
まとめ
この記事を通して、葉酸の推奨量を巡る歴史と、その科学的な背景をご理解いただけたでしょうか。信頼できる知識は、あなたの不安を解消し、未来への確かな一歩を踏み出すための力となります。
もしあなたが、これらの情報を踏まえて「自分に合った葉酸サプリを具体的に検討したい」とお考えでしたら、おすすめの葉酸サプリランキングの記事も、きっとあなたの助けになるはずです。
この記事が、あなたの葉酸に関する疑問を解消し、健やかな毎日を送るための一助となれば幸いです。
参考文献・参照