コラム
column

生理中に葉酸サプリは飲んでOK?妊活中の疑問に答えると共にタイミングや選び方のポイントも解説

妊活中に生理が来ると、気持ちが沈んでしまったり、「このままでいいのかな」と不安になったりしますよね。特に、毎日飲んでいる葉酸サプリについて、「生理中も飲み続けて意味があるの?」「もしかして、飲まない方がいい?」と疑問に思う方も少なくありません。

結論から言うと、多くの専門家や公的機関は、妊活中の女性は生理中でも葉酸サプリの摂取を継続することを推奨しています。

この記事では、厚生労働省などの公的な情報や、広く公開されている専門家の見解を基に、なぜ生理中も葉酸サプリの摂取が推奨されるのか、その理由と、多くの方が抱える疑問について、一つひとつ分かりやすくまとめていきます。

この記事が、あなたの不安を解消し、安心して妊活に取り組むための一助となれば幸いです。

生理中に葉酸サプリの摂取が推奨される3つの理由

生理中でも葉酸サプリの摂取が推奨されるのには、いくつかの理由が挙げられます。ここでは、その代表的な3つの理由について、公的な情報を交えながら見ていきましょう。

理由1:厚生労働省が「妊娠1ヶ月以上前」からの継続摂取を推奨しているため

葉酸の継続的な摂取が推奨される最大の理由は、厚生労働省が妊娠を計画している女性に対し、妊娠の1ヶ月以上前からサプリメントなどを活用した葉酸摂取を呼びかけているからです。これは、赤ちゃんの脳や神経が作られる非常に重要な時期(妊娠超初期)に、母体に十分な葉酸があることが大切だと考えられているためです。

多くの場合、妊娠に気づくのは早くても妊娠4〜5週頃ですが、赤ちゃんの重要な器官の形成はそれよりも前に始まると言われています。そのため、「妊娠がわかってから葉酸を飲み始める」のでは、最も重要な時期を逃してしまう可能性があると指摘されています。

いつ妊娠するかを正確に予測することは難しいため、生理中も含めて毎日欠かさず葉酸を摂取し、常に体内の葉酸濃度を適切な状態に保っておくことが望ましいとされています。

【参照】厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

  • 通常の成人女性の推奨量: 240μg/日
  • 妊娠を計画している女性、または妊娠の可能性がある女性: 通常の食事に加え、いわゆる栄養補助食品から400μg/日の葉酸を摂取することが望まれる、とされています。

理由2:葉酸が体内に蓄積しにくい「水溶性ビタミン」であるため

葉酸は水溶性ビタミンのため、脂溶性ビタミンのように体内に大量に長期間貯蔵されることはありません。必要量を超えた分は主に尿中に排出されますが、肝臓には体内の葉酸のかなりの部分が貯蔵されており、また腸肝循環によって一部は再吸収され再利用されます。そのため、変動しやすい体内の葉酸レベルを常に最適な状態で安定させるためには、毎日の継続的な摂取が望ましいとされています。

理由3:身体のコンディションを整えるサポートとして

葉酸は、次の妊娠に向けた身体の土台作りをサポートする栄養素としても知られています。特に、葉酸が持つ「赤血球の形成を助ける」という働きは、生理期間中の女性にとって大切なポイントです。

生理中は、経血によって鉄分と共に血液が失われがちになります。この時期に、血液の材料となる葉酸を補給しておくことは、身体のコンディションを整える上で役立つと考えられています。

健康な母体は、健やかな妊娠期間の重要な基盤です。生理期間を、次のチャンスに向けた「準備期間」と捉え、身体に必要な栄養素を補給しておくという考え方もあります。

生理中の葉酸サプリに関するQ&A|よくある疑問を調査しました

ここからは、多くの方が抱くさらに具体的な疑問について、一般的な情報や専門家の見解を基にQ&A形式で見ていきましょう。

Q1. 生理不順や生理痛、PMS(月経前症候群)への影響はありますか?

A. 葉酸サプリは、これらの症状の「治療」を目的としたものではありません。 葉酸は医薬品ではないため、症状を改善する直接的な効果を謳うものではありません。もし症状が日常生活に支障をきたすほど辛い場合は、サプリメントに頼るだけでなく、婦人科などの専門機関に相談することをおすすめします。

ただし、葉酸サプリの中には、PMSの症状に関わるとされる「ビタミンB6」などが一緒に配合されている製品もあります。バランスの取れた栄養摂取は、健康維持の一助となる可能性があります。

Q2. 生理中に飲むと、経血量が増えたり、生理が早まったりしますか?

A. 葉酸サプリと経血量や生理周期との医学的な関連性は低いと考えられています。 もし体調に変化を感じた場合は、サプリメント以外の要因(ストレス、疲労、食生活の変化など)が関係している可能性も考えられます。どうしても心配な場合は、一度サプリの摂取を中断し、かかりつけ医や薬剤師に相談してみましょう。

Q3. 生理中は貧血気味です。鉄分サプリと一緒に飲んでも良いですか?

A. 葉酸と鉄分の併用は、一般的に問題ないとされています。 葉酸と鉄分は、どちらも健康な赤血球を作るために必要な栄養素として知られています。特に、生理で鉄分が失われがちな時期には、両方を摂取することで、健康維持のサポートが期待できます。多くの妊活用サプリに両方が含まれているのはこのためです。

効果的な飲み方は?葉酸サプリを飲むタイミングと選び方のポイント

日々の生活に無理なく取り入れ、上手に葉酸サプリと付き合っていくための、実践的なポイントをご紹介します。

いつ飲むのがベスト?おすすめのタイミング

葉酸サプリは医薬品ではないため、基本的にいつ飲んでも良いとされています。最も大切なのは「毎日、飲み忘れないこと」です。

継続することが重要ですので、ご自身のライフスタイルに合わせて習慣化しやすいタイミングを見つけるのが良いでしょう。

  • 続けやすいタイミングの例: 朝食の後、寝る前など
  • 習慣化のコツ: スマートフォンのリマインダー機能を使う、毎朝使う歯ブラシの横に置いておくなど

胃腸が弱い方は、空腹時を避け、食後に飲むのが一般的です。

【チェックリスト付】後悔しない!妊活中の葉酸サプリの選び方

市場には多くの葉酸サプリがありますが、大切な時期に飲むものだからこそ、製品選びは慎重に行いたいものです。サプリメントを選ぶ際に、比較検討の参考となる5つのポイントをご紹介します。

【表:妊活用葉酸サプリ選びのチェックリスト】

チェック項目ポイント解説なぜ重要か?
① 葉酸400μg以上&(モノグルタミン酸型)厚生労働省が推奨する付加量を満たしているか。吸収が良いとされる「モノグルタミン酸型」かを確認しましょう。効率的な栄養摂取と、赤ちゃんの健やかな発育をサポートするという観点から推奨されています。
② 安全な製造管理&(GMP認定工場など)原料から製造、出荷まで一貫した品質管理がされているか。GMP認定マークは品質管理基準の一つです。デリケートな時期に毎日口にするものだからこそ、製品の品質や安全性は重要な選択基準となります。
③ 葉酸以外の栄養素&(ビタミンD, B群, 鉄, 亜鉛)葉酸の働きを助けたり、妊活中に不足しがちと言われる栄養素がバランス良く配合されているかを確認します。これらの栄養素は、葉酸の神経管閉鎖障害予防という主目的を直接補助するものではありませんが、妊娠に向けた総合的な身体のコンディションを整える上で役立つ可能性があります。ただし、個々の栄養素の必要性や適切な摂取量には個人差がある点には留意しましょう。
④ 添加物の少なさ香料、着色料、保存料などの不要な添加物が極力使われていないか、成分表示を確認しましょう。長期間、安心して飲み続けるために、シンプルな処方の製品を選ぶという考え方もあります。
⑤ 継続しやすい価格高品質なのはもちろんですが、無理なく続けられる価格であることも重要な要素です。定期購入なども比較検討してみましょう。妊活期間を考慮し、数ヶ月〜1年以上継続することを前提に、経済的な負担も考える必要があります。

おわりに:自分を大切に、前向きな気持ちで妊活を

妊活中に生理が来ると、焦りや不安を感じてしまうのは、とても自然なことです。先の見えない道のりに、心が疲れてしまう日もあるかもしれません。

ですが、どうか自分自身を責めないでください。

生理は、決して「失敗」のサインではなく、あなたの身体が「また新しい命を育むための準備を始めましたよ」という、次へのスタートの合図と捉えることもできます。

葉酸サプリを飲むといった行動は、未来について真剣に考え、自分の身体を大切にしている証拠です。その小さな努力の積み重ねが、いつか大きな喜びに繋がることを願っています。

この記事が、あなたの疑問や不安を少しでも軽くし、前向きな一歩を踏み出すための後押しとなれば幸いです。

参考文献

本記事の執筆にあたり、以下の文献を参考にしました。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586574.pdf

神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について (平成12年12月28日)
URL: https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1212/h1228-1_18.html

「健康食品」の安全性・有効性情報 – 葉酸 (国立健康・栄養研究所)
URL: https://hfnet.nibn.go.jp/vitamin/detail652/

葉酸欠乏症 (MSDマニュアル プロフェッショナル版)
URL:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/09-%E6%A0%84%E9%A4%8A%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E7%97%87-%E4%BE%9D%E5%AD%98%E7%97%87-%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E8%91%89%E9%85%B8%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E7%97%87

Vitamin or mineral supplements for premenstrual syndrome (PMC – PubMed Central)
URL: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6491313/

産婦人科 Q&A (金沢医科大学病院)
URL: https://www.kmc.or.jp/news/250428-440.html

健康食品の表示・広告の適正化について (消費者庁)
URL:https://www.caa.go.jp/notice/other/caution_001/review_meeting_001/meeting_004/assets/consumer_safety_cms206_240510_6.pdf

監修者
院長

たけつな  のぶひと

竹綱 庸仁

経歴

平成16年愛知医科大学医学部卒業

愛知医科大学院病院 卒後臨床研修医

平成18年愛知医科大学病院 小児科入局

平成23年愛知医科大学小児科 助教

平成29年たけつな小児科クリニック開院

所属
学会

日本小児科学会(専門医/指導医)

日本外来小児科学会

日本小児科医会(地域総合小児医療認定医)

日本小児神経学会

Copyright たけつな小児科クリニック.
All Rights Reserved.

トップへ戻る